子どもを通わせるなら「幼稚園」か「保育園」か 運営側も教育とサービスの間で暗中模索

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都内でも広い園庭がある幼稚園は人気が高い

「親のための保育園、子どものための幼稚園」――。ひと昔前まではよくこのように言われていた。ところが社会の変化に伴い、この概念は確実に薄れつつある。共働き世帯の利便性に考慮して保育時間を延長する幼稚園、幼児教育の視点を取り入れ教育的機能を高める保育園、そして、両方の機能を併せ持つ認定こども園の出現。未就学期の子どもを通わせる教育・保育の場は、選択肢が広がっているように見えるが、実情はどうなのだろうか。

約9割の幼稚園が預かり保育を実施

11月初旬、東京都内のある幼稚園では、朝早くから願書提出を待つ親たちが列をなしていた。人気の園では整理券が配られるなど、幼稚園にしてすでに“お受験”の様相を見せるところもある。人気を集めているのが預かり保育を行っている幼稚園だ。通常保育を行っている時間帯(一般的に9~14時)の前後、早朝や夕方まで園で子どもを預かってくれるもので、園によっては21時まで保育を実施するところも出てきている。

各自治体も慢性的な待機児童問題の解消策として、預かり保育を行う園に対して補助金を出すなど、待機児童の受け入れ先として幼稚園に期待を寄せる部分もある。園によって夕方の保育延長に差はあるものの、都内の私立幼稚園では実に9割の園が何らかの形で預かり保育を行っている。

東京都清瀬市にある清瀬ゆりかご幼稚園の園長で、東京都私立幼稚園連合会振興対策委員長も務める内野光裕氏はこう話す。

「幼稚園はあくまでも幼児教育を行う場。中でも私立幼稚園はその教育内容にそれぞれ特色を持っています。少子化が進む中、そうでなければ園として生き残ることさえ難しい時代です。園の理念を壊すことなく利便性を高めた結果、預かり保育というシステムを導入する園が増えたということではないでしょうか」

恒常的に待機児童を多く抱える都市部では、「父母がフルタイムで共働き、かつ父母の両親が遠方在住」という条件がなければ、実質的に保育所に入ることは難しい。そのため、たとえばフルタイムではないが働いている母親や求職中の母親などにとって、預かり保育はなくてはならないものだ。

一方で、幼稚園の預かり時間が長くなった結果、「父母がフルタイムで共働き、かつ父母の両親が遠方在住」という保育所に入れる条件を満たしていても、あえて子どもを幼稚園に通わせる家庭も増えている。毎日弁当を持たせる必要がある、保護者参加の行事が多い、など親のコミットメントを強く求める幼稚園は多く、働く親にとっては決して“使い勝手”はよくない。にもかかわらず、幼稚園を選ぶ背景には「幼稚園は子どものための施設」という意識が強くあることが伺える。

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