子育て支援の切り札が「保育難民」を生む矛盾 鳴り物入りで始まった新制度に困惑の声

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現場の実情にそぐわない制度設計。その悪影響は子どもたちにも及ぶことになりかねない

都内の私立幼稚園に子どもを通わせているAさんは、動揺を隠さない。「私たちのように、(フリーランスなどで)週に何日かだけ働いている母親にとって、『認定こども園』なんて、何ひとつメリットがないんです」。

認定こども園とは2006年から設置が始まった施設で、保育所と幼稚園の機能を併せ持つ。今年4月に施行された「子ども・子育て支援新制度」では、増加の一途をたどる待機児童の受け皿となるべく、さまざまな制度改正が盛り込まれた。

「預かり保育」にシワ寄せ

Aさんの子どもが通う幼稚園も、2016年4月から認定こども園に移行することが決まった。ところが今年10月に開かれた説明会で、在園児の保護者が「フルタイム共働きの家庭が毎日、長時間保育を利用することで、私たちが日頃利用している『預かり保育』の枠が激減するのではないか」などと、不安を訴えた。

認定こども園になれば、自治体がさまざまな条件に照らして「長時間保育が必要」と認定した子どもに、一定数の保育枠が割かれるからだ。

預かり保育とは、通常保育(一般的に9〜14時)の前後、早朝や夕方に幼稚園で子どもを預かるサービスである。首都圏をはじめとして待機児童の多い都市部では、父母がフルタイムで共働き、かつ、父母の両親が遠方に住んでいる家庭でなければ、子どもを保育所に入れることは非常に難しい。Aさんのようにフリーランスで働いていたり、求職活動中の母親にとって、預かり保育は不可欠なものとなっている。

認定こども園に移行後も、園側がすべてのニーズに応えるには、職員を増やしたり、園舎を増築しなければならず、簡単には対応できない。

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