子育て支援の切り札が「保育難民」を生む矛盾 鳴り物入りで始まった新制度に困惑の声

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別の母親はこんな不安も漏らす。「これまでと異なる家庭環境の子どもが通うようになれば、幼稚園が伝統的に培ってきた雰囲気が損なわれてしまうかもしれない」。

これは幼稚園にとっても悩ましい問題だ。長時間保育の必要性が認定される子どもの場合、入園の申し込みは市区町村が窓口となる。入園希望者の数が定員を上回れば、保育の必要度などに応じて自治体が「利用調整」を行う。これまでであれば園独自の選考基準で入園を決めていたものが、幼稚園の教育方針などと関係のない、一律の基準で決まってしまうわけだ。

在園児の母親たちは、自ら園の特徴を発信するサイトを制作したほか、預かり保育の充実などを求め、政治家への働きかけも始めている。

東京で認定返上の動き

女性の社会進出などに伴い、保育所に通う子どもが全国的に増える一方、長時間保育に対応していない幼稚園は在園者数が減少傾向にある。

こうした状況を好転させるべく2006年にスタートした認定こども園だが、認定を取るための事務手続きが煩雑などの理由で、当初はなかなか普及しなかった。

新制度では、認定こども園法を改正し、所管を内閣府に一本化。運営に関する補助金の仕組みもわかりやすくした。認定こども園の数は全国で2836(2015年4月時点)と、前年から倍増した。

ところが、認定こども園の数が減った都道府県が、1つだけあった。全国最多の待機児童を抱える東京都だ。2014年の103園から93園に減少。すでに受けていた認定を返上する園が相次いだためだ。

東京都清瀬市にある「ゆりかご幼稚園」も、認定を返上した幼稚園の1つである。東京都私立幼稚園連合会の委員も務める内野光裕園長は、「うちは母親がフルタイムで働いていてもいなくても、入りたいという子どもはすべて受け入れたい」と語る。

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