子どもを通わせるなら「幼稚園」か「保育園」か 運営側も教育とサービスの間で暗中模索
そもそも幼稚園と保育園は、設置に至った経緯が異なる。学校教育法に基づき、義務教育前の教育の基礎を培うことを目的としてできた教育機関が、文部科学省が管轄する幼稚園だ。
特徴的な保育園も増えてはいるが
一方の保育園(保育所)は、戦後の戦争孤児対策の一環として1947年に制定された児童福祉法によって生まれた。親の就労や病気などの理由で保育を必要とする子どもの保育は自治体が責務を負うものと定められ、自治体や自治体から運営を委託された社会福祉法人が開設したのが認可保育所の始まりだ。現在においても、保育所は厚生労働省が管轄する児童福祉施設だ。
だが、都内13カ所で認可保育所や認定こども園を運営する社会福祉法人東京児童協会の菊地元樹事務局長はこう話す。
「児童福祉施設として始まった保育所ですが、時代の変化で保護者のニーズは多様化しています。私たちの園では家庭的保育をもとに食育、しつけなどにも力を入れてきました。今後は地域の特性を生かし、それぞれの園に合ったやり方で子どもたちを育てていきたいと考えています」
たとえば同法人が墨田区に開設した園では、この地で暮らした葛飾北斎を身近に感じて育ってほしいと、北斎の浮世絵のレプリカを飾っている。また、茶道や華道など和の文化に精通する人が多い地域では、園内に茶道もできる和室を設け、近隣から講師を招いて保育時間内にお稽古が受けられるようにもしたという。
認可保育所の場合、建物や園庭などの設備、職員の配置、保育内容などについて、厚生労働省や都道府県などが基準を定めているため、どこも同じような建物、保育内容になりがちだった。それが、こうした取り組みによって、それぞれに特色が出てきているのが実状だ。東京児童協会では最近、公立保育園の運営を受託するケースが増えているというが、そのような場合でも「私たちの目指す保育をご理解いただいたうえで、環境整備のための内装を変えることから始めます」と菊地事務局長は言う。
とはいえ、「教育」と「サービス」の狭間での苦悩は尽きない。東京都では保育所においても福祉サービス第三者評価の実施を推進しているが、その内容は「利用者本位の福祉の実現」を目指すもの。教育機関である学校関係者から見ると、その評価項目に違和感をおぼえてしまうのはやむをえないところだ。一方、保護者側の感覚には地域ごとにバラつきがあり、「目指す保育」が受け入れられにくいケースもあるという。
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