子どもを通わせるなら「幼稚園」か「保育園」か 運営側も教育とサービスの間で暗中模索
たとえば、集団活動を取り入れようと思えば、決まった時間に登園することが必要になる。遅れてくれば、子どもはその活動に途中参加となり、十分な教育的効果は望めなくなる。「生活リズムをつけるうえでも決まった時間に登園することは大事なのですが、保護者が夜遅くまで仕事をしているなど、保護者側の生活スタイルに合わせるために子どもの登園時間が10時を過ぎるケースもあります」(菊地事務局長)。
保護者から「保育サービスなのだから、親の利便性をいちばんに考えるべきだろう」と言われることもある。はたして福祉は「サービス」なのか。幼児教育と保育のベストバランスを保つにはどのような道があるのか、暗中模索が続いているという。
幼保一元化でもニーズに応えられない
幼稚園と保育園――。就学前教育・保育を行う施設の境界がこれだけあいまいになってきているにもかかわらず、その所管や給付構造が二分されている状況は特異だ。そのため、これら2つの施設の一元化を図ろうとする政策については、1990年代後半からすでに本格的な議論が進められてきた。
2015年4月に始まった子ども・子育て支援新制度では、幼稚園と保育園の機能を併せ持った「認定こども園」の普及が大きな柱となっている。両親の就業状況にかかわらず子どもを預けることができ、増加の一途をたどる待機児童の受け皿としても期待されている。新制度の施行とともに、認定こども園の数は全国で2836(15年4月時点)と前年から倍増。普及が進むとみられた。
ところが、だ。幼稚園と保育園の“いいとこ取り”に見える認定こども園でも、実は拾いきれないニーズが多くあった。新制度下の認定こども園では、長時間保育を利用する場合は市区町村から保育の必要性に関する認定を受けなければならなくない。これまで、幼稚園の預かり保育を頼りに在宅勤務やフリーランスなどで働いていた家庭でも、その認定が受けられない可能性が出てくる。また、たとえば在園中に母親がフルタイムで働き始めて長時間保育が必要になった場合、あらためて市区町村から保育の必要性に関する認定を受け、待機児童の列に並ばなければならない。
清瀬ゆりかご幼稚園の内野氏は「今後も特に都市部では、認定こども園に移行する幼稚園は増えないのではないか」と推測する。「認定こども園を増やすよりも、幼稚園による預かり保育の充実や、3歳になった月から入園できる満3歳児保育を実施する幼稚園を増やすほうが現実的だと思います」。
子育て世帯のニーズは多様化している。最近では、0~2歳児向けにプリスクールを設置する幼稚園も増えており、人気も高まっている。「フルタイム共働きだから保育所」「専業主婦家庭だから家庭保育の後に幼稚園」という硬直化したイメージにとらわれていては、時代の波に対応できないことだけは確かなようだ。
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