バンコク銀行を支える日本人バンカーの正体 日系企業取引で断トツ、大洪水にもめげず

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バンコク銀行の「日本企業部」は70人。日本の地銀からは20人が出向している

――バンコク銀行に移られたのは2003年ですね。

入行した翌年の2004年に日本企業部を立ち上げた。そのとき、アジア通貨危機の時のお客様もこっちへ移ってくれた。

私は、2011年の大洪水の際も、日系企業に2000億円融資しました。この時も、他行は貸さなかった。工場が水没したのを目の当たりにすると、「本田だって潰れるかも」と思ってしまうんです。私は日頃から600社の工場を見ていたので、工場の強さもライバルとの力関係も頭に入っていた。

タイで最大級だったフジクラの場合、工場は何十回と見ています。東京のフジクラ本社で社長の考えも伺った。商売の全体が分かっていたから貸せたんです。

日系企業は市場を見ていない

――目下、タイの経済は減速しています。

これが巡航速度ですよ。2010年度に80万台だった自動車販売台数が2012年度140万台になって、これが実力と思い込んでしまった。日本と同じでバブルが忘れられない。

でも、この国は実質3%成長できる力を持っています。タイの中央銀行は(他のアセアン諸国に比べ)外資のコントロールをきっちりやっている。米国の利上げも、他の国と比べれば、その影響は相対的に軽く押さえられると思う。

――タイの日系企業の現状はどうでしょう。かつて世界に覇を唱えた家電各社に全く勢いがありません。

存在感があるのはトヨタ以下、自動車産業だけです。東南アジアの家電はすでに2000年の時点でサムスン、LGに押さえられてしまった。冷蔵庫を例に取ると、タイの家庭は、普通、食事は屋台など外食で済ませるから、キッチンがない。サムスンやLGは応接間に置けるような木目調の立派な冷蔵庫を中心に据えた。日本各社がしのぎを削っている、いろんな多機能なんて初めから必要ないんです。日系企業はまったく市場を見ていないということです。

私たちの使命は、日系企業に隆々としてもらうこと。ですから、この10年、私はお客様を集めたセミナーでさんざん毒舌を振るっています。日系企業は世界で勝とうとしていない。自分たちのお客様も、ライバルも見ていない。何よりもコンプライアンス第一で、会社の中しか見ていないと、いっている。

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