一流の経営者は、根っからのゲーマーが多い ゲームが社会をより良いものにしていく

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瀧本:真面目に社会運動をやっている人は、なにもかも大きく変えようとするので、結局誰も変えられず、何も変えられないわけです。しかし、個人が手元で遊ぶゲームを通じたアプローチによって、個人を変えるというのは非常にいいですね。私が投資した会社もゲームの考え方を教育に応用して、フィリピンやメキシコでも成功しています。

また、この本をマーケッターの人がマーケティングの本として読むというのは想定していないかもしれませんが、マーケティングの本としてもいいんじゃないかなとも思います。マーケティングの世界はネタ切れ感があるので、こうした新しい発想を学ぶ必要がある。また新しい変革が起こるはずで、そのためのヒントになりそうです。

「ゲームを通じたアプローチによって、個人を変える」

マクゴニガル:実際、1冊目の『Reality Is Broken』に書かれているプロジェクトの多くは、マーケティング会社から委託されたものです。おっしゃるとおり、マーケティングの人たちにもこの本によってインスパイアしてもらいたいと思っています。というのは、マーケティングというのは、本当に多くの人の人生に影響するものだからです。マーケティング産業は非常に大きな産業であるし、それによって人の幸福が増えるのであれば望ましいことだと思います。

瀧本:ゲームの発想というのは強い、強力な武器です。一方で悪用することもできる。ジェインさんの基本的な世界観自体がすごく前向きで、ソーシャルグッドになる方向にこの考え方を使う発想が明確に打ち出されています。それは、たぶんジェインさんの価値観から来ていると思うんですけれども。なぜ、前向きな価値観を持つようになったのか、自己分析してもらえますか。

なぜゲームを社会のために使おうと思ったのか

マクゴニガル:社会人になった直後ですが、開発したゲームがたくさんの賞を受賞しました。MITから35歳以下の社会をポジティブに変えるトップ35人の1人に選ばれました。でも、実際のところ受賞した自分のゲームというのは、社会にポジティブな変化をもたらそうというものではなく、ただ遊ぶためのゲームでした。

そのMITの授賞式に行った時に、ほかの受賞者がアフリカの貧困問題を解決していたりとか、がんの問題に取り組んだりとか、そういった人たちを見て、自分も自分のスキルを世界のために役立てたいというふうに思ったのです。自分のスキルをスーパーパワーとして使いたいと。10年前の出来事なのですが、それによって今の道が開けていったと思います。誰もが自分のスキルを使って、世界をよりよい場所にしていきたいと思っているはずです。自分はゲームデザイナーなので、ゲームデザイナーとして世界をよくしていきたいというふうに思いました。

瀧本:なるほど、ゲームとか神話でもよくあるんですけど、主人公は最初小さな成功をする。でも、それは実は本当の成功じゃないことに気づいて、次のミッションを見つける。これは典型的な物語なわけですよね。倒した敵が実は本当の敵ではなく、もっと本当の敵は別のところにいるんだ、と気づくというのも典型的な物語です。実は、ジェインさんはそういうゲーム的なことを本当にリアルに経験したわけですね。

マクゴニガル:そうです。これはゲームを現実に生かすことができるんだ、という証拠だと思います。ゲーム思考というものを持っていたおかげで、新しいチャンスが見えたわけです。ヒーローというのは何か大きいことをしたいものです。ゲームによって、その思いの種を撒くことができます。ですから、ゲームをやる若い世代を励ますことが必要だと思います。リアルライフでもヒーローになるチャンスを見つけられるように励ましていくことが大切だと思います。

瀧本:今ちょうど、イスラム国の問題が起きています。ややゲーム的な感覚で多くの若者が参加している。ゲーム的な思考方法がリアルなところに、かなりネガティブな形で出ていると捉えることもできるとも思います。

次ページもちろんネガティブな面もある
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