一流の経営者は、根っからのゲーマーが多い ゲームが社会をより良いものにしていく

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瀧本:逆にそうしたやりがいのない現実から逃げるためにゲームにのめりこむという構図が、日本では結構強いのだと思います。昔、『リネージュⅡ』というゲームがありました。そのキャッチコピーは「本当の人生が始まる」だった。

つまり、リアルライフは「壊れている」いわば無理ゲー(ゲームバランスが悪く楽しめない状況)なので、もうひとつの「本当の人生」を楽しんでください、というキャッチコピーだったんですね。あと、『ラグナロクオンライン』というゲームの場合、「会社では使えないOLである私も、ゲームの中ではみんなに頼られている。この姿を部長にも見てほしい」といった内容の交通広告があったんです。

ゲームを現実逃避に使うべきではない

「ゲームを現実逃避のために使っている人は、ゲームからメリットを得られない」

マクゴニガル:そうしたキャッチコピーは、本当に多くの人たちが実際に抱いている感情なので、すごく巧妙なマーケティングだと思います。でも、それは問題でもあると思います。

日本では、3分の1の人が年間350時間以上をゲームに費やしている、という調査結果があります。それを換算すると、2カ月間フルタイムの仕事をしているのと同じです。それだけの熱意をゲームに注いでいて、まるで仕事をしているかのようにゲームをしているという現状があります。実は、ゲームを現実逃避のために使っているという人たちは、いちばんゲームからメリットを得られない人たちです。

およそ半数の人たちがゲームをやることでメリットを得ていて、逆に半数の人たちはもっとうつ状態になるなど、現実生活がよくなっていない人たちです。そのゲームが自分にとって役立つか、ためになるかどうかを左右しているのは、本人がゲームを現実回避のために使っているか、もしくは現実に生かせるものだと思っているかなのです。そこがいちばん大きな違いです。だからこそ、自分はこの本を書きました。ゲームでのスキルは現実生活に生かせるんだよ、ということを書いたのです。

瀧本:ジェインさんのアイデアがクリエイティブなのは、ゲームの持つすばらしさを現実に適応すれば、現実がゲームのようによくなる、という点です。そこがすごくイノベーティブなアイデアだと思います。「現実がダメなので、ゲームに逃げてください」というキャンペーンとは、ある意味では逆ですから。ゲーム脳という言葉もあるように、ゲーム有害論も根強い。そうした見方を壊してしまったのもすごく新しい。

日本でゲーム産業に関わっているような人がこれを読むと、「なるほど、僕たちがなんとなくやっていたことは、こういうことだったのか」と認識すると思います。今の日本のゲーム開発は高いレベルにありますが、壁にも当たっているので、新しいゲームを生み出すヒントにもなるように思います。実は隠れたバイブルになるかもしれない。

マクゴニガル:日本のゲームの開発者にとってユニークなチャンスだと思います。というのは、日本のモバイルゲーム市場は世界最大の規模です。モバイルゲームというのは誰でも簡単にできるもの。ということは、ゲームの効能、メリットを簡単に人に届けることができるわけです。だから、本当に社会を変えられると思います。ゲーム産業にとって新しいチャレンジであり、新しいチャンスです。

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