フィジカルAIを先導するのは娘と息子
「絶対コケられない」ジェンスン・フアンの本音
「“ファミリー”がやっているんだから、フィジカルAIは絶対コケられないよね」。フィジカルAIをターゲットに次々と手を打つ米エヌビディアだが、社内では冗談めかしてそう語られているという。
創業から30年以上、CEOとしてトップに君臨し続けるエヌビディアのジェンスン・フアン氏。実はその娘と息子も、エヌビディアで働いている。興味深いことに、2人とも担当領域は「フィジカルAI」なのだ。
娘のマディソン・フアン氏は「オムニバース」を中心とするプラットフォームを統括するシニアディレクター。オムニバースとは、工場や倉庫をデジタル空間上に再現して「メタバース」を作り出すソフトウェア基盤のこと。工場や倉庫の自動化や、フィジカルAIの導入に使われる。
マディソン氏の経歴は異色だ。ニューヨーク州の料理学校を卒業後、レストランでシェフとして勤務。その後、フランスのラグジュアリーブランドグループ・LVMHで約4年間、マーケティングに携わった。英ロンドンビジネススクールでMBAを取得後、2020年にエヌビディアに入社している。
息子のスペンサー・フアン氏は、よりロボティクスに直結する分野を担当する。ロボットをシミュレートするプラットフォーム「Isaac(アイザック)」や、ヒューマノイド向けAIモデル「GR00T(グルート)」といったロボット向けサービスのプロダクトマネジャーだ。
マディソン氏と同様、スペンサー氏もテック畑の人間とはいえない。アメリカの大学を卒業後、台湾の台北市でカクテルバーを創業。「アジアのトップ50バー」に選出されるほどの有名店に育てた。8年間のバー経営の後、22年にエヌビディアに加わる。
2人の報酬はいかほどか。開示資料によると、マディソン氏は年間110万ドル、スペンサー氏は53万ドル。ちなみに、エヌビディア従業員の25年度の報酬の中央値は30万ドルだった。
エヌビディアは半導体メーカーだが、実際には従業員の大半がソフトウェアエンジニア。GPUを売るだけでなく、その上で動くソフトウェアやプラットフォームを提供することで、生成AI市場における独占的な地位を築き上げてきた。
マディソン、スペンサー両氏の担当分野は、いずれもハードではなくソフト領域。しかも、急成長するフィジカルAI市場を牽引していくドライバーだ。彼らの配置は、ジェンスンCEOが思い描く「次世代」のエヌビディアの姿を如実に映し出しているのかもしれない。
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