放射能汚染に見舞われた福島、安心を得られない県の健康調査、行政の対応に批判相次ぐ

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「住民の視点に立っておらず、県がお仕着せで対策を進めていることに最大の原因がある。いくら講演会を重ねても対策の実施が後回しでは、住民の不安は解消できない」

こう指摘するのは東京大学医科学研究所の上昌広特任教授だ。

上氏は原発事故発生直後から、相馬市などの浜通り地区で被災住民対象の医療活動に従事。南相馬市立総合病院でのホールボディカウンターによる内部被曝検査(タイトル横写真)は、上氏の研究室に所属する坪倉正治医師(写真)が中心になって実施している。

南相馬市立病院では、「県に対策を依存していたらいつまで経っても住民の不安は解消しない」と判断。独自に導入した高性能のホールボディカウンターを用いて、住民の内部被曝検査を進めている。同病院では3月末までの検査実施人数は一度目の検査だけで1万2000人に到達。病院の機械は1台だが、5台の機械を持つ県や委託先の日本原子力研究開発機構が実施した約2万2000人と比べても遜色ない。

南相馬市での内部被曝検査結果は図で示した。昨年9月26日~12月27日の高校生以上の検査結果では、4割強の住民からセシウム137を検出。ベラルーシの民間研究所で「注意が必要」とされる20ベクレル/キログラム以上に達した小中学生4人を含む、比較的高い数値が検出された住民については、二度目の検査を実施している。その一方で、データからは市民の体内セシウム量が大きく減少している事実も判明している。


 ただし、南相馬市立病院では「油断は禁物」(金澤幸夫院長)と判断。今夏に2台目の機械を導入することで、「子どもや母親を中心に年1回の検査体制を構築する」(同氏)。甲状腺検査でも年1回の実施体制実現を目指しており、現在までに3人の検査技師を東京の専門病院にトレーニングのため派遣している。

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