花王がアリババと提携、転売業者に「待った!」 最高益視野だが、事業は明暗分かれる
販売価格は未定だが、正規輸出よりも税率の低い「行郵税」が適用され、「自由貿易試験区」内の倉庫を活用することで、物流コストを節約できるため、店頭価格より価格を抑えることが可能だ(経済産業省調べ)。
店頭価格、花王の中国法人が開設する「天猫」のオフィシャルショップの販売価格の見直しもしたうえで、「適正な価格で販売する予定」(花王関係者)という。11月11日(中国独自の記念日「独身の日」)に行われるアリババの大規模セールを狙って、それまでに出店する算段だ。
効果は既に現れている。このニュースは中国メディアでも大きく報道され、SNSでは、早くも転売業者がおむつの転売から退却しようとする動きがある。今後は、「状況に応じてアリババに加えて他の現地越境eコマースサイトへの出店もあり得る」(花王関係者)。
独り負けの化粧品事業を大刷新
花王がここまで必死に紙おむつ事業の伸びを拡大しようとするのは、深刻な不振に苦しむ化粧品事業の立て直しに、投資と時間が必要だからだろう。売上構成比の2割弱を占める化粧品事業は、1~9月で前年同期比4.1%減少した。訪日観光客需要で想定を超える売り上げに沸く化粧品業界で、「独り負け」の状態だ。
こうした状況を食い止めるべく、同社が進めているのが、花王「ソフィーナ」の大刷新だ。「科学の花王」を前面に打ち出すことで、ぼやけてしまったブランドイメージの引き締めをはかる。11月13日には、同社初の旗艦店を銀座の一等地にオープンする予定だ。
2006年の買収以来抱えてきた、「カネボウ化粧品との相乗効果が出ていない」という課題にも手を打っている。
2014年7月には、カネボウの小田原研究所に花王とカネボウの化粧品研究組織を集約し、今年7月には工場も統合。さらに、9月24日には債務超過状態が続くカネボウ化粧品の販売会社へのテコ入れも発表された。花王の系列販売会社2社とともに来年1月に設立される「花王グループカスタマーマーケティング」の持ち株会社となることで、販売知見の共有や、積極的な人事交流を行う。来期には、商品の刷新も予定されている。
ただし、化粧品事業の改革はまだ始まったばかり。8月末の「ソフィーナ」新商品会見にて、澤田社長が「中長期的に利益を出していく」と語ったように、すぐに業績貢献が見込めるものではない。それまで紙おむつは牽引役をつとめなければならず、失敗は許されない。それゆえ、横行する「メリーズ」転売にメスを入れる今回の越境eコマースへの参入は、「待ったなし」の決断だったはずだ。
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