花王がアリババと提携、転売業者に「待った!」 最高益視野だが、事業は明暗分かれる

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花王が中国の紙おむつ市場に参入したのは、2009年。ライバルのユニチャームより8年も遅い。が、この腰の重さが吉と出た。ユニチャームが開拓した販路に上手く入り込み、まずは都市部の富裕層向けに日本製を輸出。「日本製ブームに上手く乗り、長年取れていなかったアジアでの利益を伸ばすことができた」(三菱UFJモルガンスタンレー証券の川本アナリスト)。

2012年には紙おむつ工場(安徽省合肥市)が竣工し、翌年から中国人の嗜好に合わせて独自に開発した「メリーズ瞬爽透気」も投入。中間所得者層をターゲットに日本製の約半分の価格で売り出した。

しかし、「少し無理してでも子どもにはお金をかけたい」という消費者が増えた結果、日本製人気はいまだ根強い。「売上の約8割が日本製」(アナリスト)との見方もある。2014年の末には、中国製の割合が高いユニチャームのシェアを抜き、中国紙おむつ市場で第3位にまで駆けのぼった。

アリババと提携して転売業者に対抗

そこにビジネスチャンスを見出したのが、転売業者だ。中国で販売される日本製の価格は、テープタイプMサイズ64枚入りで、170元(1枚あたり2.6元。日本円で3220円程度)。しかし、日本の店頭では同じ製品を1500円以下で購入することができる。中国最大のネット商店「天猫(Tモール)」をのぞいてみると、正規の輸出品より50~70元程安価な100元前後の転売品が多数出品されているが、それでも彼らの取り分は十分にある。

アリババとの提携を決めた澤田道隆社長(写真は8月末の花王ソフィーナ新商品発表会にて。撮影:尾形文繁)

この事態を、花王は憂慮し続けてきた。まずは日本の店頭での品薄状態を解消しようと、2014年春には、発泡入浴剤「バブ」などを生産していた山形県の酒田工場に50億円を投資しておむつの生産ラインを増設。現在は全3工場フル回転での増産体制をとっている。

それでも、店頭での品薄は依然解消しておらず、中国市場の混乱も避けられない。この事態を受けて、花王は本格的にメスを入れ始めた。

10月13日に飛び込んできたのは、中国のアリババと提携し、越境eコマースサイト、「天猫国際(Tモール・グローバル)」で日本製「メリーズ」を販売するというニュースだった。

花王側の出店理由は、表向き「市場の変化に対応し、新しい消費者を開拓するため」だが、跋扈する転売業者に「待った!」をかける意図があることは明確だ。

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