資生堂、課題は個々のブランド力の強化 総会で問われた「プロ経営者」魚谷社長の手腕

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就任2年目の魚谷社長は、資生堂のブランド力への危機感をあらわにした(写真は2014年11月の新製品発表会。撮影:今祥雄) 

昼下がりの帝国ホテル(東京・千代田区)に続々と集まる株主。化粧品国内大手の資生堂は、6月23日、定時株主総会を開催した。所要時間は2時間5分(2014年は2時間)。会場を訪れた株主は2452人(同2241人)。剰余金の配当、定款一部変更、取締役・監査役の選任、業績連動報酬の割合を減らす新役員報酬制度の決定、などの議案は全て承認された。

今回の株主向けのお土産は、ヘアケアブランド、「TSUBAKI」のシャンプーとコンディショナー。苦戦を強いられている低価格帯、トイレタリー、メンズ商品の売り上げ拡大策の一手として、今年3月にリニューアル発売されたものだ。

議長を務めたのは、魚谷雅彦社長。日本コカ・コーラ社長などを経て、2014年4月に異例の外部人事で抜擢された、いわゆる「プロ経営者」である。しかし、社長の双肩には、日本を代表する化粧品メーカーの抱える課題がズシリとのしかかる。事業報告で魚谷社長は、国内事業の売上高やマーケットシェアの縮小、海外の営業利益率の減少を指摘し、「さまざまな経営努力をしてきているものの、悪循環から脱し切れていない。売り上げが減少すると、流通在庫が増えていき、経営目標を守るためには、広告宣伝費や研究開発費を削減せざるを得ず、結果としてブランド力が育たない」として、現状への危機感をあらわにした。

中国事業の立て直しに全力

復調傾向にあるとはいえ、前2015年3月期の資生堂の業績はふるわなかった。主力の国内化粧品事業は、2014年10月から化粧品が外国人観光客に対する免税対象となり、インバウンド(訪日外国人)需要が拡大するなど、追い風が吹いたものの、消費増税後の反動減を補い切れなかった。結果として、全体の売上高は前々期比2.1%増ながら、営業利益は同44.4%減に終わった。国内では、前下期から回復の兆しが出始めた、中・高価格帯の化粧品の復調維持が目下の課題である。

株主と経営陣との主な質疑応答は以下の通り。質問した株主は計10人。株主からは、国内と中国における、事業立て直し計画についての質問が多く出た。

――中国における現在の事業展開と、今後の事業再構築について、どう思うか。中国で6月から始まった、日用品の関税引き下げについて、今後の対応はどう考えているのか。

ラルフ・アーベック・執行役員常務「中国は、スキンケア・マーケットとして世界ナンバーワンで、市場規模が2.6兆円にのぼる。これは、第2位の日本よりも25%大きく、とても重要な市場だ。

ただ、ここ数年で、中国での競争優位性がなくなってきたことは認めざるを得ず、中国事業の立て直しに向け、全力を尽くしているところ。われわれは、3つの政策として、①中国の市場調査によるブランドの再成長、②イノベーションスタッフ増員による技術革新、③現地社員の採用による組織の立て直し、を掲げている。資生堂が世界で最高の商品を持っていることは中国の客も知っている。中国事業はこれから必ず立て直すことが可能だと思っている」

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