トヨタ、株主総会で問われた「新型株」の効用 元本保証の新株発行に株主から批判の声

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名古屋から1時間はかかる豊田市の本社で行われた総会の出席者は4655人。昨年より約100人多かった

昨年、不満をぶつける株主はおらず、終始、和やかな雰囲気で幕を閉じたトヨタの株主総会。打って変わって今年は、時間、質問(3時間2分、32問)ともに過去最高。”熱気”を帯びた株主総会だった。

総会前から注目を集め、株主総会でも質問が集中したのが第7号議案。「AA型」と名付けた種類株の発行決議だった。これは、5年間売買できない代わりに元本保証がある特殊な株式で、次世代技術の研究開発資金の調達と、中長期でトヨタを支えてくれる株主の創出が狙いだ。

まったく新しい株式に対し、議決権行使助言会社の最大手である米インスティテューショナル・シェアホルダーズ・サービシーズ(ISS)は、安定株主を増やすことが経営の規律を失わせるといった理由などから、反対を表明。海外の機関投資家を中心に発行に対する批判の声が高まっていた。

「メリットが分かりにくい」

6月16日の総会では、新型株の発行に対して「デフレ時代に自信を失った個人投資家との新しいパートナーシップを構築するビジョンとチャレンジ」と評価する声もあった。

たが、全体としては「具体的なメリットがわかりにくい」「株売却も一つの意思表明。それを奪われた形でどうガバナンス向上に寄与できるのか」「債券発行とのコスト比較は」「なぜ今なのか」「優先配当を受けられるのでは現経営陣に好意的な判断しかしない。ガバナンスを弱めることになる」といった批判的な意見や質問が数多く出た。

元本保証で議決権も付与されているが譲渡制限があること、発行価格は株価よりも高く、配当利回りは普通株式よりも低いなど、前例のない新型株はさまざまな特徴を持つ。その特性が捉えにくいだけに、分かりにくさを訴える株主が多くいたのは、ある意味で当然だったともいえる。

会社側は小平信因副社長が「自動車産業を取り巻く競争環境は大変厳しくなっている。中長期的な視点に立ち、次世代モビリティの革新技術の開発に腰を据えて取り組む。中長期的な視点からご意見をいただくことで持続的成長につなげたい」などと理解を求めた。

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