豊田章男社長は「種類株発行は株主の方に選択肢を広げる。資本市場を活性化させるために民間企業であるトヨタが半歩進めた」と意義を語り、「未来のモビリティ社会を作る。一緒にやりましょうよ」と大きな声で訴えかけた。
それでも、AA型株の発行にについて会場での納得を得られたとは言いがたい空気感だったが、特別決議として必要な3分2(66.6%)を10%近く上回る、約75%(速報ベース)の賛成を集めて承認された。トヨタ関係者は6月上旬、種類株発行の議案について「3割の機関投資家は(議案に反対を表明した)ISSに賛同、3割は賛成、3割は決めかねている、というイメージではないか」と慎重な票読みをしていただけに、経営陣もひとまず胸をなでおろしたことだろう。
もっと丁寧な説明を
議案の可決を受けてトヨタは同日、5000万株のAA型種類株を7月24日に発行することを取締役会で決議した。資金使途については、燃料電池車開発や高度知能化モビリティ開発など、「次世代イノベーションのための研究開発資金」とし、全額を2016年3月末までに充当する方針だ。今後、AA型は最大で発行済み株式数の5%未満(1億5000万株)の発行を予定しており、現時点の株価を基にした概算の調達額は約1.5兆円(普通株の自己株買いを勘案するとネットで約3000億円)となる。
種類株にトヨタ初の量産乗用車である『AA型』の名前を冠したことについて、トヨタ関係者は「豊田喜一郎が自動車事業をベンチャーとして始めたことを意識しているから。当時に出資して頂いた戦前の株主名簿が(トヨタ社内には)残っている。長期資金のおかげで今日がある」と話していた。
総会後、ある男性株主(70)は「社長が一問一問丁寧に答えていたのが印象に残った。AA型種類株については今の資本市場に一石を投げかける挑戦と高く評価しているが、合理的な外国人にはそうした思いが理解されにくかったのかもしれない。今後はもっと丁寧に説明して欲しい」と述べていた。
株主の4分の1が反対した中、新たに発行するAA種類株をどう生かすのか。次世代の研究開発のために長期の資本を選んだことで、将来を見据えた投資の覚悟を明確にしたともいえる。同時に、成果に対する説明責任もいっそいう重要になることは間違いない。
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