花王がアリババと提携、転売業者に「待った!」 最高益視野だが、事業は明暗分かれる
「『メリーズ』に限り、一家族1点に限らせていただきます」。店頭で、こんな張り紙と品薄の紙おむつ売り場を見たことはないだろうか。
「メリーズ」は、日用品・トイレタリー最大手の花王が展開する幼児用の紙おむつだ。国内では1983年の発売以来のロングセラー商品で、25%程度のシェアを持つトップブランドだが、2012年からは海外展開も本格化した。
現在は、中国を中心とした11カ国で販売されており、これまで海外での需要を上手く取り込めてこなかった"内弁慶"企業の花王が海外市場を切り開く起爆剤となっている。特に中国では「花王(ファーワン)」と呼ばれて人気が爆発。2011年度に27%しかなかった海外売上高比率は、今や36%と10ポイント近く上昇した。
爆買いが牽引、過去最高益が見えてきた
10月27日に発表された2015年12月期の第3四半期(1~9月)決算では、この「メリーズ」や生理用品「ロリエ」などが含まれる「ヒューマンヘルスケア事業」が国内と中国で好調で、同事業の売り上げは前年同期比19.3%増と頭一つ抜きん出た伸びを示した。
目下テコ入れ中の化粧品や、原料高や取引先となる海外自動車業界からの需要減に泣いた化学製品事業の不振をカバーした恰好で、第3四半期までの全体の売上高は前年同期比5.5%増の1兆624億円、営業利益は36.2%増の1102億円を叩き出した。
同日には、通期会社予想の上方修正も発表。売上高を1兆4700億円(前期比12%増)に据え置いたままで、営業利益を過去最高益の1550億円とした (同12%増)。ただ、これはあまりにも慎重な数字だろう。
会社側は、「化学製品事業が原油価格の下落が続いていることでさらに厳しくなることを織り込んだ」(会計財務部門の山内憲一管理部長)として、10~12月を営業減益とするが、実際はさらに上振れる可能性が高い。3期連続での過去最高益達成がほぼ見えてきた、絶好調の花王。しかし、それを手放しでは喜べない事情がある。
「中国人の方が大量に買っていき、必要なお客様に商品が行き渡らない」(某ドラッグストアの店員)――。収益柱の「メリーズ」で、中国人の転売業者による日本製の買い占めと転売が横行しているからだ。冒頭の張り紙は、こうした中国人に向けたものである。
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