松下幸之助、稲盛和夫、藤田田、孫正義… 名経営者たちの金言に学ぶ「増長する若手社員」を上手に遇する社内処世術

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このエピソードは、若いうちから「大人の社会」のルールを理解し、目上の人に対して礼節を重んじていた孫氏の姿を物語っている。現代の年長者と若者の関係性と比べれば、心温まる「日本昔話」のように映る。

古くから日本に根づいていた「心理的安全性」

最近、「心理的安全性」という言葉をよく耳にするようになった。ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が、罰せられる心配なく、自分の意見を安心して述べられる組織環境の重要性を説いた理論である。

アメリカのビジネス界は、厳しい競争社会だ。会議では容赦ない言葉が飛び交い、ライバルを蹴落とすことも「実力」のうちと見なされる。成果主義や個人が数字に基づき厳しく評価され、職場に緊張感が漂う。経営戦略の転換、固定費削減などを理由に、いつクビを斬られるかわからない。

企業の従業員は、心穏やかでいられない。こうした背景から、この理論が生まれたのだろう。過度な競争が生む不安定さへの対抗策ともいえる。

心理的安全性という考え方は、医療現場のチーム調査をきっかけに生まれた。ミスの報告が多いチームほど、互いに信頼し合い、協力していた。安心して失敗を認められる環境が、結果的にチームの力を高めていた。

その後、Googleが社内調査「プロジェクト・アリストテレス」でこの理論を裏付けた。成果を出すチームの共通点は、メンバーが自由に意見を言える雰囲気を持っていたことだった。

この理論が日本に紹介されると、「日本企業は意見が言いにくい」「同調圧力が強い」といった批判とセットで語られることが多かった。だが、こうした見方には偏りがある。ある重鎮の経営学者と会話をしていたとき、次の言葉を聞いた。

「アメリカの経営学者が言っていることの多くは、日本企業ですでに実践されていたので、今さらといった感じです」

この一言が脳裏に焼き付いている。

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