「女性管理職比率」「人的資本経営」…社会からの要請に企業はどう応えるか 《その数値は誰のため?》見失われる本質とその代償

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先に記しておくが、筆者は人を簡単に解雇できる世の中にしたいとは微塵も思っていない。日本の解雇規制が厳しすぎるがゆえに、屋上屋を架さなければならない実態に警鐘を鳴らしたいと考えているだけだ。

経済合理性を重んじる企業経営においては、「新たな価値を生み出す資本を磨き、価値を生まない資本は入れ替える」というのが基本姿勢となる。

だが日本の法律の下では、それを柔軟に行うことができない。結果として、成熟産業から成長産業への人の移動が起こらず、成熟産業に人材が滞留してしまっているのが現状である。

人的資本経営の目的は、人材の個性や能力の最大限の発揮によって企業価値を高めることにある。

それならば、自社では価値を生みにくい(他社に移れば個性や能力を発揮できる)人的資本を柔軟に(会社と個人がお互いに納得感を持って)入れ替えることができるよう、解雇法制をいまよりは緩和する議論が始まることを期待している。

おわりに

さまざまな社会的要請の中でも「女性管理職比率」「人的資本経営」という2つを取り上げて、その向き合い方を論じてきた。会社で働く人はみな、ルールに振り回されるのではなく、こうした社会的要請の本質を見抜いてうまく活用していく必要がある。

次回は、「ワークライフバランス」「副業・兼業」という個人の働き方に関するバズワードの本質を紐解いていく。

組織と働き方の本質 迫る社会的要請に振り回されない視座
『組織と働き方の本質 迫る社会的要請に振り回されない視座』(日経BP 日本経済新聞出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします
小笹 芳央 リンクアンドモチベーション代表取締役会長、経営コンサルタント

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おざさ よしひさ / Yoshihisa Ozasa

1961年、大阪府出身。

早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材開発部、ワークス研究所主幹研究員、組織人事コンサルティング室長を経て、2000年に独立。

同年、世界初のモチベーションにフォーカスしたコンサルティング会社、リンクアンドモチベーションを設立し、代表取締役に就任。

行動経済学、社会システム論、心理学などを基盤にモチベーションエンジニアリングという独自の基幹技術を確立。大手企業から中堅中小企業まで幅広く組織改革の支援を行っている。2013年より現職。

リンクアンドモチベーションは2008年に現東証プライム市場に上場。CVCとしても出資先企業多数、約半数がIPOまたはバイアウトなど驚異的な確率を実現中。著書に『会社の品格』(幻冬舎新書)、『モチベーションマネジメント』(PHP研究所)など計28冊。累計発行部数は約100万部。 

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