「女性管理職比率」「人的資本経営」…社会からの要請に企業はどう応えるか 《その数値は誰のため?》見失われる本質とその代償
第1のレイヤーは、「男性/女性」という「生物学的レイヤー」だ。このレイヤーには本人の意思は反映されない。生まれながらに定まった生物としての特性である。
第2のレイヤーは、「男性/女性/LGBTQ+」などの「性の自己認知のレイヤー」だ。第1回で触れた「One for All, All for One」の「One」(=個人)の視点からのレイヤーである。このレイヤーは、個人の指向性や感性を示している。
第3のレイヤーは、「社会的レイヤー」だ。「One for All, All for One」の「All」(=社会)の視点であり、このレイヤーは、男性/女性/LGBTQ+は関係なく、個々人の「個性」が輝くことで社会全体の活力向上や発展を目指すことがテーマである。
ところが、おかしなことに女性管理職比率目標は、第3の社会的レイヤーに、第1の生物学的レイヤーでの性別を持ち込んでしまっている。ここに、論理矛盾が存在するのだ。
このように、3つのレイヤーの関係を見ても、女性管理職比率について、各企業に一律に数値目標を課すことには違和感しかない。今こそ、1人ひとりが自分の「個性」をいかんなく発揮できる社会にするために、どんな施策が考えられるのかを議論するべきなのではないだろうか。
「人的資本経営」の真相
「人的資本経営」も近年、社会的な関心が高まり、企業にとっては対応が迫られているテーマである。
投資家からの要望に応える形で、2023年3月期から、有価証券報告書を発行する企業約4000社に人的資本に関する情報の開示が義務化された。これにより多くの企業が新たな情報収集や開示体制の構築を進めているが、実務上の負担や社内調整の必要性が生じている、との声もある。
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