若手研究者の間で進む"アメリカ離れ"、トランプ政権の愚策がもたらす「産業大国の緩やかな死」

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産業の根幹をなす研究開発の分野に対して冷淡な政策を進めるトランプ大統領。その行動は自国の首を絞めかねない(写真:ブルームバーグ)
トランプ政権による研究プロジェクト削減や大学に対する助成金への締めつけによって、アメリカの研究活動が深刻な問題に直面している。アメリカにとっての本質的な危機だ――。野口悠紀雄氏による連載第144回。

アメリカから逃げ出す若手研究者

研究活動を締めつけるトランプ政権の政策のために、アメリカの若手研究者の75%がアメリカ脱出を検討中という衝撃的なニュースが報道された。これは、イギリスの科学ジャーナル『ネイチャー』が2025年3月に実施したアンケート調査の結果だ。

大学院生やポスドク(博士研究員)など初期キャリアの研究者の間で、とくに危機が深刻だ。「本当はアメリカを離れたくないのだが、代わりの選択肢がない」という。

アメリカのトップ大学で植物ゲノミクスの研究を行っていたある博士課程の学生は、トランプ政権による国際開発庁(USAID)の資金打ち切りによって、研究費と生活費を失った。指導教員が短期的な緊急資金を手配してくれたが、それだけでは不十分だ。

経歴の浅い研究者にとっては、今後の経歴にとって極めて重要な時期なのに、完全に混乱させられた。研究を継続したいが、見通しはよくないという。

ワシントン・ポストによると、政権が発足してから3月後半までの間に、いくつもの研究活動が凍結された。

その1つが、国立衛生研究所(NIH)と疾病対策センター(CDC)の新型ウイルスに関するあらゆる研究活動だ。政府は3月7日、生物医学研究に対するNIH助成金の間接費を数十億ドル削減すると発表した。

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