若手研究者の間で進む"アメリカ離れ"、トランプ政権の愚策がもたらす「産業大国の緩やかな死」

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航空宇宙局(NASA)では、専門的な立場から助言を行う「チーフ・サイエンティスト」の所属部門が廃止に。人工知能(AI)の研究を行うアメリカ国立科学財団では、170人が解雇される。

このほかにも、アメリカ国内の石油・天然ガス・石炭などを積極的にエネルギーへ変換することを認める大統領令や、政府によって進められていた多様性・公平性・包括性(DEI)優遇策を「過激で無駄が多い」として廃止する大統領令などによって、気候変動やジェンダー、人種、公平性などに関連する科学研究で、政府からの支援が打ち切られる。

大学への研究助成金も削減

トランプ政権による研究活動の締めつけは、大学にも及んでいる。大学が受け取る研究助成金が大幅に削減されているのだ。

スタンフォード大学やイェール大学などは、2月に支出削減策を打ち出した。ペンシルベニア大学も、教職員などに経費の5%引き下げを目標とする支出削減策を通達した。

ハーバード大学は3月10日、アラン・ガーバー学長が新規採用の凍結を指示した。一部の学部では選考が進んでいた教職員の採用が中止となり、授業スケジュールが組み直しとなった。

ジョンズ・ホプキンス大学は3月13日、大学が運営する非営利団体などを通じた公衆衛生分野での対外援助活動を大幅に縮小し、関連職員2000人を削減すると発表した。活動資金の多くを提供してきたUSAIDをトランプ政権が事実上の閉鎖に追い込んだためだ。

このような状況の中で、フランス最大の大学であるエクス・マルセイユ大学は「トランプ政権の反科学政策によって自分たちの研究が検閲される危険性があると考えるアメリカの科学者たちは、フランスで研究を続けてほしい」と呼びかけた。

同大学のエリック・ベルトン学長は、プレスリリースで次のように述べている。

「私たちは、新たな頭脳流出を目の当たりにしています。私たちは、できるだけ多くの科学者が研究を続けるのを助けるために、全力を尽くします。しかし、私たちだけですべての要求を満たすことはできません。教育研究省はこの取り組みを全面的に支援しており、国内レベルとヨーロッパレベルの両方で拡大することを目的としています」

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