日本の大学も、これと同じようなメッセージを出すべきではないだろうか。
歴史的に見ても、ヨーロッパなどから優秀な人材がアメリカに移住することが、アメリカの研究活動を支えてきた。とりわけ、第2次世界大戦時にアドルフ・ヒトラーが行った人種差別政策によってヨーロッパ大陸から多くの人材がアメリカに逃れ、それがアメリカの科学・技術の基盤を作った。
1980年代のIT革命もインド人と中国人が作ったといわれる。実際、現在のアメリカのIT企業のトップの多くがインドや中国に出自を持つ人々だ。
この傾向が逆転するとなれば、アメリカには重大な不利益が及ぶことになる。ドナルド・トランプ大統領がアメリカ国内で実施している大規模な人員削減と研究活動費の凍結は、海外への頭脳流出を促し、アメリカを弱体化へと導いている。そして、それはすでに現実化しつつあると考えるべきだろう。
科学者たちが発したSOS
4月1日、食品医薬品局(FDA)のピーター・マークス博士が辞任した。同博士は、第1次トランプ政権で立ち上げられた、新型コロナウイルスに対するワクチン開発計画「ワープスピード作戦」の推進者だ。
FDAの上部組織であるアメリカ厚生省が、マークス博士に対して、辞職しない場合には解雇すると伝えていたと報じられている。トランプ政権では「ワクチン懐疑派」として知られるロバート・ケネディ・ジュニア氏が厚生長官になり、ワクチンに関する研究への連邦政府の資金が次々と打ち切られている。
こうした情勢の中で、ノーベル賞受賞者を含むアメリカを中心とした科学者およそ2000人が「科学界への攻撃」をやめるように求める書簡を公開した。書簡では「政府による80年以上にわたる賢明な投資が、世界がうらやむ今のアメリカの研究体制を構築した。トランプ政権は研究への資金を大幅に削減し、数千人の科学者を解雇して、この体制を揺るがしている」としている。
そして、医療や気候変動の分野でとくに資金が削減されているとして、「新しい治療法やクリーンエネルギーなど、未来の新しい技術の開発を主導するのは、アメリカ以外の国になるだろう」と警告している。そのうえで、トランプ政権に対し「科学界に対する全面的な攻撃をやめるよう求める」と訴えている。
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