日本サッカーの技術水準は間違いなく上がっている。
サッカー人口の裾野が広がったことが最大の理由だが、加えて、6歳から12歳までのゴールデンエイジで、サッカーの楽しさや厳しさ、テクニックをしっかり身に付けさせるという日本サッカー協会の指導が全国に行き渡ったことが大きい。
昔は静岡、埼玉、広島のサッカー御三家が強かったが、今は沖縄から北海道まで全国どこのチームが日本一になってもおかしくない。それは御三家の力が落ちたのではなく、ほかの地域の力が上がったのです。
一方で、みんなが同じサッカーをしているように感じる。みんなうまいし、いいサッカーをするけど、個性がなくなった。私は長崎サッカー協会会長もしているが、トレセン(協会の育成制度)担当者はうまい選手ばかりを集めたがる。トレセンの選考基準は、正確にボールを扱えて状況判断ができること。でも、小学生段階でそんなことができるのかいなと内心では思っている。早く成長する子供もいれば奥手の子供もいる。
日本の取り組みは南米や欧州とは差がある
100メートル走が13秒ゼロの選手をどれだけ鍛えても、11秒ゼロにすることは無理。でも、11秒ゼロで走れるが下手な選手の場合、練習次第でうまくなるかもしれない。技術は時間をかければ育てることができるので、身長がむちゃくちゃ高い、ものすごく足が速いといった、鍛えても身に付かない能力は重要だ。
高木琢也は中学までサッカーをやっていなかった。高校入学時、シュートはどこに飛ぶかわからないが、10本に1本は釜本邦茂さん級のキーパーも取れないシュートを打った。毎日の居残り練習で得意の形を身に付けさせた。結果、高校3年で国体の得点王になり、後には日本代表のストライカーになった。
ただ、高木がシュートを外して負けた試合も多く、監督である私はいろいろ批判を受けた。技術は未熟だが先天的能力が高い選手を育てるには、指導者に我慢が必要だ。
画一化の懸念はあるが、日本サッカー界の取り組みの9割はうまくいっている。ただ、南米や欧州とはまだまだ差がある。サッカーの根付き方が違う。彼の地では男の子は全員サッカー選手を目指す。日本は野球やバレーボールなどに才能が分散してしまう。その中から能力がある子供を探して育てるので、どうしてもよい選手が生まれる確率が落ちる。
Jリーグができて20年弱。日本が世界トップになるにはまだまだかもしれん。あと30年から40年かな。50年経ったら定着するだろう。
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