いる選手で勝つ布陣考える 長崎県サッカー協会会長・小嶺忠敏氏③

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こみね・ただとし 1945年生まれ。島原商業高校、国見高校で教員・サッカー部監督を務め、全国高校サッカー選手権大会の6回を含む全国大会17回優勝。高木琢也、大久保嘉人など多くの代表選手を育成。現長崎総合科学大学教授、長崎県サッカー協会会長など。

4バックか3バックか。1トップか2トップか3トップか。サッカーではつねにシステムが論じられる。「小嶺先生のサッカーはどういったシステムですか」と聞かれることも多い。だが、選手の能力に応じてシステムがあるのであって、システムありきではない。

料理に例えると、すき焼きを作りたい。でも、牛肉も野菜もなく、魚しかないなら、すき焼きを作ることはできない。魚があるなら焼き魚や天ぷらなど材料に合わせて作れるおいしい料理を考えればいい。

今、世界の頂点にいるのはスペインのFCバルセロナ(バルサ)。バルサは「ウチはこういうサッカーをやる」と決めて、ユースの育成段階からそれを貫き成功している。それは世界中からバルサがやりたいサッカーに合った選手が集まってくるから成り立つわけです。世界中からおカネに糸目をつけず作りたい料理のために、いちばんいい牛肉や野菜を集めてくることができるならば、すき焼きにこだわってもいい。

システムありきでは勝てない

それなのにサッカー関係者はバルサバルサと言ってバルサのビデオばかり見せる。もちろん、バルサのサッカーをできる能力のある選手がいればいい。でも、自分のチームの選手でバルサのサッカーができるのか。簡単にできるわけがない。

昔、クライフ率いるオランダが強かった時代は、日本中のチームでオフサイドトラップが流行した。今でも日本代表があるシステムを採用すると、選手の個性を考えず、指導者たちは同じことをやろうとする。

 トルシエジャパンの頃は、あちこちの高校がディフェンスラインを高く保つシステムをやっていた。当時国見には大久保嘉人(ヴィッセル神戸所属)がいて、チームメートに松橋章太と佐藤陽介という俊足フォワードがいた。(俊足で有名だった)岡野雅行選手(元日本代表)よりも二人は足が速かった。松橋と佐藤には「足が速いからつねにディフェンダーの裏を狙え」と、大久保には「チャンスがあったらディフェンダーの裏にパスを出せ。二人やったら絶対に勝つから」と指示していた。

相手チームの監督は「ラインを崩すな、ラインを押し上げろ」ばかり言っていたので、私は選手に「スペースを突けば絶対に勝てるぞ」と言っていた。結局、このチームは高校3冠を達成した。

選手の能力を考えず、システムありきでは勝てない。自分の選手を把握し、分析したうえで戦わないといけない。それは会社の経営でも同じなのかもしれない。

週刊東洋経済編集部
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