天然ガス世界5位の生産国カナダの「見事な決断」 ウクライナ侵攻によるエネルギー危機を救う

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アメリカは、メキシコ湾岸を中心に15カ所の液化ターミナルを有し、「ヘンリー・ハブ」という独自の価格システムを構築して、世界の天然ガス市場を主導している。

このような現状について、カナダビジネス評議会のゴルディ・ハイダー会長は、「アメリカは、カナダから安く天然ガスを輸入して、より高い価格で世界に輸出し、利益を得ています。カナダは今こそ、直接、天然ガスを欧州やアジアへ輸出し、温暖化対策に貢献し、相応の利益を得るべきです」と語る。

筆者は、同会長とは天然ガスを含め、カナダの政治経済、日加関係などについて折に触れ、率直に話し合っている。カナダの潜在力を顕在化させたいという熱意にあふれており、経済界の思潮を代弁している。

議論は動き始めている

ならば、なぜカナダはアメリカにしか輸出していないのだろうか?

実は、スペインのエネルギー企業、レプソル社は、大西洋岸のニュー・ブランズウィック州セント・ジョン港に液化施設を整備し、ヨーロッパ向けの天然ガス輸出事業について真剣に検討したのだ。

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しかし、2023年3月、採算が合わないとして断念している。

欧州諸国へ輸出するためには、アルバータ州の天然ガスをパイプラインで大西洋岸の積み出し港まで運び、そこで、ガスを液化してLNGとして、船で輸送しなければならない。

大西洋岸には、液化ターミナル施設はなく、具体的計画もないのが実情だ。

パイプラインについては、中西部アルバータ州と大西洋岸のニュー・ブランズウィック州を結ぶTCPL(TransCanadia Pipeline)計画はあるものの、このパイプラインが途中で通過するケベック州、特にモントリオール市が強く反対し、完成の目処は立っていない。

しかし、カナダの天然ガス輸出をめぐる議論は動き始めているのだ。未来の可能性も見えてきた。

山野内 勘二 駐カナダ日本国特命全権大使

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やまのうち かんじ / Kanji Yamanouchi

1958(昭和33)年生まれ 長崎県出身。1984年、東京外国語大学卒業、外務省入省。在アメリカ合衆国日本国大使館一等書記官、九州・沖縄サミット準備事務局次長、在大韓民国日本国大使館参事官、北米第一課長、総理大臣秘書官、アジア大洋州局参事官、在アメリカ合衆国日本国大使館公使、経済局長、在ニューヨーク日本国総領事・大使などを歴任して、2022年5月より駐カナダ日本国特命全権大使

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