「脱炭素社会」を制する鍵は蓄電池が握っている 熾烈なバッテリー開発の勝者が得る巨大な果実
エネルギーを総合的に学べる講義がない
藤沢久美(以下、藤沢):最初に、どうしてこの本を書こうと思われたのでしょうか。早稲田大学での講義がベースになっているそうですね。
平田竹男(以下、平田):17年前から早稲田大学で資源エネルギーの講義を行っています。早稲田もそうですが、日本の大学には理系、文系の学生がエネルギーの基礎を総合的に学べる授業がありませんでした。なぜか日本の大学生はエネルギーについて学ぶ機会がなかったんです。資源エネルギーの授業を探すと、理工学部にはある程度、石油の掘削や原子力などのうち極めて一部の技術的な側面だけを学べる授業があるのですが。
藤沢:学生たちからも大変評価が高い講義と聞いています。
平田:学生はたいへん熱心で、講義が進むにつれて意識も変わってくるところがおもしろい。最初は環境問題への意識が高くて、ドイツの再生エネルギーは素晴らしい、それに対して日本は遅れているといった意見ばかりですが、ドイツの再生エネルギーは何か起これば原子力発電が中心のフランスから電力を融通し合う送電網の強さ、加えてロシアとの天然ガスパイプラインがあって可能になっていたもので、単純に日本に置き換えればよいものではないと変わってきます。
藤沢:この本の素晴らしいところは、ファクトが充実しているところです。今の欧州の送電網もそうですが、改めて知ることがたくさんありました。もちろん、先生のお考えもたくさん述べられていますけれども、歴史やデータがしっかり書かれています。