「脱炭素社会」を制する鍵は蓄電池が握っている 熾烈なバッテリー開発の勝者が得る巨大な果実

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藤沢:また、資源エネルギー問題を見る視座として「エネルギー安全保障」(Energy Security)、「経済効率性」(Economic Efficiency)、「環境」(Environment)という3つの「E」を意識しながら見ることが大切だとも述べられています。

多くの人は、ファクトを知ることなくイメージで、「環境問題は欧州の取り組みが素晴らしい」「日本や中国、アメリカは遅れている」といったイメージで見ていますが、その背景にあるエネルギー安全保障の問題や、また経済性が伴わなければ安定したエネルギーにはならないといったことは知る機会がありませんでした。また3つの「E」が国によって違うということにも意識がまわりません。

一番勉強になったのは、EU(欧州)を1つの存在と見ていて、COPやEV推進など一様に再生エネルギーに移っているのだろうと思っていましたが、国によってエネルギー政策が大きく違っていることがわかりました。

ドイツのエネルギー戦略の特異性

平田:EUのなかでもとりわけドイツが違っていますね。イギリスは北海油田を持つ産油国で、それに裏付けされた独立性と通貨の強さがある。

平田竹男/1960年大阪生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科教授。早稲田大学資源戦略研究所所長。当時の通商産業省(現・経済産業省)、日本サッカー協会専務理事などを経て現職。著書に『スポーツビジネス 最強の教科書』等。(撮影:今井康一)

南のイタリアやスペインはアフリカが近いので、そこからの調達が可能です。イタリアなどはアルジェリアの豊富なエネルギーを受け取ることができる。

藤沢さんはJリーグの理事も務めていたサッカー通ですけれども、サッカー5大リーグで冬にリーグを中断するのはドイツだけです。

藤沢:それくらい寒さが厳しいわけですね。

平田:ドイツは石炭資源に恵まれた国ですけれども、今後は石炭もやらない、原子力もやらないで再生エネルギーに舵を切ったように見えるけれども、裏では、ロシアからのパイプラインで天然ガス資源をしっかりと確保していたわけです。脱原発と言っていてもいざとなったらフランスから電力を買えるという基盤がある。また、東西ドイツをドイツ一国に戻すための旧ソ連、ロシアとの大変な外交能力を培ってきたわけです。

その一方で、ロシアがどうしてここまで力のある国になったかということを考える必要があります。近年の「石油から天然ガスへ」という化石シフトの流れにあって、それに一番適合した国がロシアでした。

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