天然ガス世界5位の生産国カナダの「見事な決断」 ウクライナ侵攻によるエネルギー危機を救う

✎ 1 ✎ 2
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ウクライナ危機発生前のG7各国のロシアへのエネルギー依存度を見てみよう(図表1※外部配信先では閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。

図表
(図表:『カナダ―資源・ハイテク・移民が拓く未来の「準超大国」』より)

アメリカとカナダは、エネルギー自給率が100%を超えている。

日本も、1次エネルギーの輸入先の多角化を進めており、アメリカとカナダほどではないが、極端にロシアに依存しているわけではない。しかし、イギリス・フランス・ドイツ・イタリアの対ロシア依存度は高く、特にドイツは、石油34%、天然ガス43%、石炭48%を依存している。

とはいえ、このような状況は、ウクライナ危機の前には特別に問題視されてはいなかった。むしろ、緊密な経済関係は、政治面で時に難しい局面に直面するにしても、全体として欧州諸国とロシアの関係を安定化させると考えられていたのだ。

しかし、ロシアのウクライナ侵略は、このような考え方が甘かったのだと思い知らせ、21世紀の厳しい地政学的現実を見せつけた。

国際エネルギー市場の需給バランスが激変

イギリスの科学雑誌『ネイチャー』において、2022年の「ことしの10人」に国連のグテーレス事務総長らとともに選出されたのが、ウクライナの気候学者、スヴィトラーナ・クラコフスカだ。

彼女は、ロシアがウクライナへの侵略を開始した最大の要因は、各国がロシアの化石燃料に依存していることにあると喝破した。「ロシアは天然ガスと石油を輸出して、得た資金で武器を買っている」と指摘している。

そして、ロシアへの依存こそ、欧州諸国がロシアの事前の動向を黙認せざるを得ぬ状況を生んだと見ているのだ。

ウクライナ侵略後、ロシアは天然資源の輸出量を絞り、欧州諸国に圧力を加える。エネルギーを「兵器」として使うことに一切の躊躇はない。対露依存している国にとっては、ロシアを批判し、制裁を科すことが難しくなる。

蛮行に与するわけではなくとも、背に腹はかえられない。ロシアにしてみれば、エネルギーを供与してあげるから己の言い分を飲め、さもなくば供給を停止する、という圧力になる。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事