「カナダはアメリカの51番目の州になるべきだ」。トランプ次期大統領の発言でカナダが揺れている。その余波は9年続いたトルドー首相の辞任につながり、次期政権は今年のG7議長国としても難しい舵取りを迫られる。
そんなカナダだが、日本にとっては自由・民主主義・人権重視を共有する外交パートナーとして近年、存在感を高めてきた。
さらにカナダは「準・超大国」と呼ぶべき潜在力を秘めている。食糧やエネルギー豊かな資源大国、ノーベル賞学者を育んだAIや量子技術の開発国、地球温暖化対策の先進国、そして移民立国など多様な側面を持っているのだ。
留学・移住先として、また『赤毛のアン』などの文化や大自然のイメージでも日本での人気は高いが、案外知られていないカナダの素顔を紹介する(山野内勘二著『カナダ―資源・ハイテク・移民が拓く未来の「準超大国」』より一部、抜粋・編集してお届けします)。
多岐にわたる外交分野
カナダは、G7メンバーであり、国際社会において指導的立場にある。国連の創設メンバーだ。それゆえに、外交の地平は広い。
ウクライナ危機、中東情勢、あるいは北朝鮮など国際・地域情勢から、エネルギー安全保障、食料安全保障、貧困・途上国支援、人権、LGBTQ、国際保健衛生、環境・地球温暖化問題、ハイテクの問題など、非常に多岐にわたる。
安全保障分野では、カナダはNATO(北大西洋条約機構)創設メンバーであり、ヨーロッパのメンバーとの間で相互に共同防衛、軍事協力、費用負担、情報共有、政策協調の義務を負っている。
さらに、アメリカと共同でNORAD(北米航空宇宙防衛司令部)を運営している。冷戦下の1958年にソ連の弾道ミサイルの脅威に対抗するために設立されたが、現代の急速に変化する技術と新たな脅威に対処するため、宇宙監視、サイバーセキュリティー強化などの近代化にも取り組んでいる。
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