アメリカの存在感が高まる「カナダ」の外交の今後 重要な視点は移民「国民の4分の1が外国生まれ」

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経済分野では、USMCA(アメリカ・メキシコ・カナダ協定)、TPP(環太平洋パートナーシップ)をはじめ各国との重層的な自由貿易協定を結んでいる通商国家である。

さらに、カナダは、北極圏にも広大な領土を有し、北極沿岸国からなる北極評議会(AC:Arctic Council)のメンバーだ。地球温暖化で北極をめぐる状況が急速に変化する中で、安全保障、環境保護、ビジネス、科学技術面での国際協力、そして先住民問題に対処している。

カナダ外交がカバーする分野は、非常に多岐にわたる。現代の国際社会が直面するすべての課題に関わっている。そのうえで、外交を貫く重要な視点がある。

そのうちの2つが「アメリカ」と「移民」だ。これらの視点から読み解くと、そこには、カナダという国家が営む外交の実像が見えてくる。

カナダ外交におけるアメリカの存在感

「数字は嘘をつかない」と言ったのは、“近代統計学の父”と称される数学者アドルフ・ケトレーだった。カナダとアメリカの関係を数字で見てみよう。

2023年のIMF(国際通貨基金)統計で、アメリカのGDPは27兆3578億ドル。対するカナダは2兆1400億ドル。アメリカの10分の1に満たない。この2カ国が8000キロ以上の国境線で接している。

カナダはGDP世界10位の経済大国であり、重層的な自由貿易協定のネットワークを持つ通商国家である。2022年の統計では、世界第10位の貿易大国だ。

しかし、その内訳は、カナダの全輸出の75%、全輸入の50%がアメリカ相手である。

対カナダ直接投資においても44%と、アメリカは群を抜いている(2022年)。イギリス、日本がアメリカに次ぐ投資国であるが、その比率は、それぞれ7%、4%である。

これらの数字を、カナダの一方的なアメリカ依存と捉えれば、それは短兵急にして実像を見失う。17世紀以来の歴史をともに歩み、自由と民主主義と市場経済を尊ぶ同志だ。両国の間の強固な相互依存を示すと捉えるべきだ。それでも、カナダ経済はアメリカなしには成立しない。

さらに、安全保障を見てみよう。

カナダは、国家防衛という点で地理的恩恵を受けてきた。東西は大西洋と太平洋、南はアメリカ、北はアラスカと北極だ。天然の要塞といっても過言ではない。

しかし、冷戦期におけるソ連の核の脅威はリアルだった。

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