アメリカの存在感が高まる「カナダ」の外交の今後 重要な視点は移民「国民の4分の1が外国生まれ」

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カナダ外交を見るうえで重要なもう1つの視点は、移民だ。

最新の世論調査によれば、カナダ国民の4分の1が外国生まれであり、16歳未満のカナダ人の36%が、父母どちらかまたは両親が外国生まれである。しかも、かつての「白い移民」ではなく、きわめて多様である。

移民の影響力

そして、多文化主義によって、それぞれの親元の伝統と文化がカナダの文化の不可分の一体と尊重されている。

大都市を中心に、同じ国から来た移民がコミュニティーをつくり、支え合う。そして、移民は、民主的プロセスを通じて、移民コミュニティーの意見を表明する。有為な人材を発掘し、議会に送り出す。移民コミュニティーの意見は国政全般に反映される。ときには、外交政策にも影響を及ぼす。

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例えば、ロシアがウクライナを不法に侵略した2022年2月から2024年2月までの2年間で、カナダはウクライナに対して、約97億ドルの支援を行っている。これには、レオパルト2型戦車、装甲車、ドローンなど軍事支援、金融支援、人道支援が含まれている。

ロシアの侵略に対して、G7はウクライナ支援を最重視している。とはいえ、地理的には大西洋を隔てた遠隔地だ。

2021年のカナダの貿易総額1.2兆カナダドルのうち、ウクライナとの貿易額はわずかに4億加ドルに過ぎない。にもかかわらず、NATO諸国の中で、アメリカ、ドイツ、イタリアに次ぐ規模の支援を実施している。また、2024年1月までに、22万人以上のウクライナ難民を受け入れている。

この背景には、カナダに住む約150万人のウクライナ系カナダ人の存在がある。本国とロシアを除けば、世界最大のウクライナ・コミュニティーがカナダにある。連邦政府にも議会にもウクライナ系のリーダーがいる。ウクライナ侵略は他人事ではないのだ。

山野内 勘二 駐カナダ日本国特命全権大使

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やまのうち かんじ / Kanji Yamanouchi

1958(昭和33)年生まれ 長崎県出身。1984年、東京外国語大学卒業、外務省入省。在アメリカ合衆国日本国大使館一等書記官、九州・沖縄サミット準備事務局次長、在大韓民国日本国大使館参事官、北米第一課長、総理大臣秘書官、アジア大洋州局参事官、在アメリカ合衆国日本国大使館公使、経済局長、在ニューヨーク日本国総領事・大使などを歴任して、2022年5月より駐カナダ日本国特命全権大使

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