アメリカの存在感が高まる「カナダ」の外交の今後 重要な視点は移民「国民の4分の1が外国生まれ」

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

21世紀のポスト冷戦の状況は、地球温暖化による北極圏の氷の融解で一変した。カナダの国家防衛に占めるNORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)の重要性があらためて強く認識されている。

また、カナダの陸・海・空軍の武器・装備品、戦車、艦船、航空機の相当部分がアメリカ製だ。

経済と国土防衛の両面で、両国が密接な関係にある以上、カナダの外交政策において、インド太平洋であれ、中東であれ、アメリカとの関係が圧倒的な比重を占めるのは、必然である。

カナダとメキシコの関係に変化が

比較のために、最近のカナダ・メキシコ関係を見てみよう。

カナダ、アメリカ、メキシコの3カ国は、USMCAによって経済分野を軸に関係が深化。3カ国の首脳は毎年、スリー・アミーゴス・サミットと呼ばれる北米首脳会談を持ち回りで開催。

アメリカ・メキシコ間では移民問題で緊張はあるものの、協力関係を深めている。カナダ・メキシコ間には大きな問題もなく関係は良好で、メキシコ国民はビザなしでカナダへの短期滞在が認められていた。

しかるに、2024年2月、カナダ政府は「カナダ・メキシコの間の渡航と人々のつながりを支援し、同時にカナダの移民制度の完全性を維持するために、メキシコ国民の渡航条件を調整している」と発表した。

今後は、有効なアメリカの非移民ビザを保持するか、過去10年間にカナダのビザを保持したことがあって、メキシコの旅券で空路渡航する場合を除き、メキシコ国民はカナダ入国に際して観光ビザの取得が必要となるのだ。要するに、ビザ免除が停止されたのだ。

これに対し、メキシコのオブラドール大統領(当時)は、カナダが一方的にビザ免除廃止に踏み切ったことを非難。カナダが主催する次の北アメリカ首脳会談への不参加を示唆した。

ミラー移民・難民・市民権大臣は、カナダを経由してアメリカに移住するメキシコ人の増加に対して、アメリカから受けた圧力が部分的に影響した旨コメントした。

確かに、2024年の大統領選挙を控えたタイミングで、アメリカとメキシコの国境から流入する移民は、アメリカにとって非常に機微な問題だった。

一方、移民・難民を含む外国人の受け入れに関する判断は、国家主権の核心である。特に、カナダは自由と多様性と包摂性を重んじてきた。良好なメキシコとの関係にも悪影響を与えることが予見された。

それでも、ビザ免除の停止に踏み切ったのだ。アメリカとの関係調整に腐心するカナダの現実がにじんでいる。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事