進学校の子の親ほど「子供の将来」に苦しむ矛盾 「将来への備え」という現代病にかかっている

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勉強している男の子と見守る大人
「本来の学び」とはどのようなものか。それを阻害する「将来への備え」という現代病とは?(写真:eizan/PIXTA)
過熱する中学受験や教育の早期化。「将来のために」と親が先回りして備える現象はあらゆるところで起こっています。さらに教育産業が親の不安をあおって稼いでいる側面もあり……本来の「学び」とは何か。それを実践していくために本当に必要なことは何か。わからなくなっている人が多いのではないでしょうか。
そんな中、小中学生を対象にした思考力教室「いもいも」を主催する井本陽久さんは「正解を求める勉強には意味がない」と断言します。進学校・栄光学園の非常勤講師を務めながら、デイスクールや森の教室など幅広い学び場をつくる井本さん。
同じく教育者であり、福岡で学習塾からフリースクールまでを経営する鳥羽和久さん。2人が考えた「本来の学び」とはどのようなものか。それを阻害する「将来への備え」という現代病とは?
鳥羽和久さんの新著『「学び」がわからなくなったときに読む本』より一部を抜粋、編集しお届けします。
第1回『「暗記勉強は無意味」では全くないと断言できる訳
第2回『ニュージーランド公立小の"自由で刺激的"な日常

教えられたことは身につかない

鳥羽:「学校の勉強には意味がない」という言葉の真意をもう少し聞きたいです。というのも、僕は学校のカリキュラムはある程度よくできてると思っていて。やり玉に挙がりやすい「丸暗記」の勉強を含め、無意味ではないという立場なんです。

井本:そうか。確かに自分の興味のあることを学ぶうえでは有用な面もあるとは思います。でも問題なのは、学校では「できる/できない」で評価するというところです。「できる」ことが評価されるのであれば、子どもたちは評価されたいので「できよう」とします。すると、自分のやり方、考え方でやるのは損だと思うようになります。なぜなら、自分のやり方でやるとは試行錯誤、つまり何度も失敗をすることを前提にしているからです。

つまり「できる」ことを評価すればするほど、子どもたちは学びにおいて自分を封じることを「学ぶ」わけです。その証拠に、テストで正解を導くやり方がわかっているのに、あえて「自分は別のやり方でやってみよう」なんて思う子はほぼいないですよね。学んだ解法に沿って正解を導くのではなく、いまある自分の手持ちでなんとかする。そうして自分なりの道をたどっていくなかで、気づかぬうちにいろんなことが身についていく。それこそが本当の学びだし、勉強としても楽しい! 

たとえ一生懸命、自分なりに思考した結果、間違ってしまっても、むしろ子どもたちはそこからたくさんのことを学んでいきます。一方で教えられたことは身につかないんです。

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