実は売上減少の「養命酒」が狙う"起死回生"の秘策 新規事業の名は「くらすわ」…って一体それなに?
今では、くらすわの森に隣接する駒ヶ根工場勤務の社員も、駐車場整理や誘導を手伝い、全員で客を迎えている。「くらすわの森ができてから、社員がくらすわのほうを向き、会社が変わろうとする意思を感じ始めているのではないでしょうか。穏やかな企業風土はそのままに、全社的に改革へ突き進む体制になりつつあると感じています」。
昨年8月に行われた諏訪湖の花火大会では、出店した縁日で社員が接客し、まるで高校の文化祭のような活気と一体感に包まれた。それは、かつての養命酒製造では見られなかった光景だった。
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どんな企業であっても新規事業を行う際には、社内の理解や根回しが必要だ。だがくらすわのケースでは、「おいしい、体にいい商品」が最も感覚に訴えるプレゼンになったのかもしれない。
くらすわの森のオープンから取材時で約1カ月。今も「オープン景気」の状況が続く。利用者は時間帯によりさまざま。平日は主婦が多く、土日は家族連れや年配、若い人もと幅広い。「それだけのお客様が訪れ、喜んでいただける施設がある」ということに、くらすわで働くスタッフは誇りを感じているとのことだ。
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売上は順調に増加、利益面はこれから
では、業績面はどうなっているのか。売り上げは、2020年の約6億円から、2023年には11億2,000万円に。2024年は15億4,000万円を見込んでいるという。これは、店舗とECでの商品販売を含めたブランド全体の数値で、なかでも、店舗の伸び率が高い。コロナ以降に徐々に客が戻り、今ではコロナ前の水準を越えた。
とはいえまだ、比重は圧倒的に養命酒のほうが高く、くらすわ事業のセグメント利益は2024年3月期で約4億600万円の赤字、2025年3月期も赤字を見込んでいる。まだまだ投資のフェーズなのだ。
「もう1本の柱にはなれていません。爪楊枝ぐらいです。しかし、これから必ず、柱に育てていきます」。そう福盛さんは決意を語る。
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