実は売上減少の「養命酒」が狙う"起死回生"の秘策 新規事業の名は「くらすわ」…って一体それなに?

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商品開発でも、試行錯誤の末に成功事例が生まれている。最近では、プレミアムパンシリーズを開発したそうだ。もともと、くらすわのベーカリーは、「添加物がほとんど使われず、小麦の香りがしておいしい」と人気だった。

そこに加えて、「高級食パンのように、昔から王道のものを突き抜ければブームが起こる」「なじみのものだからこそ、『いやこれは違うわ』とみんなが納得するものを作れればヒットする」と常々思っていたと福盛さん。

この発想から、食パン、あんぱん、クリームパン、ジャムパン、メロンパンと、5種類の「究極のパン」を考案、見事、数時間で売り切れるヒット商品になった。「特にあんぱんは、あんこから開発したこだわりのレシピです。食べてもらえば、ほかとはちょっと違うとわかっていただけるはず」と自信を見せる。

くらすわの森
「くらすわの森」のベーカリーで提供している、5種類のプレミアムパン(写真提供:養命酒製造)

商品では、鍋の素や粥、にゅうめんなど、「おいしくて体によさそう」な雰囲気に加え、ほかにはない世界観、個性を持っている商品が売れ筋だ。たとえば鍋の素では、八角、シナモン、スイカズラ、クローブを加えた、コク深くスパイシーな風味の「黒養なべ」が人気なのだとか。そもそもは、諏訪本店のレストランメニューとして提供していたレシピを商品化したものだそうだ。

こうした成功体験を重ねながら、タニタ食堂の味噌汁のような、看板商品の誕生に向けて挑戦は続いている。

養命酒 黒養なべ
スパイシーな風味で体が温まる「黒養なべ」の調理イメージ(写真提供:養命酒製造)

養命酒が描く未来

今後くらすわが目指すのは、「DEAN & DELUCAにすこやかさをプラスしたブランド」という独自の立ち位置だ。赤字覚悟の投資であるくらすわ事業を経て、養命酒は、穏やかでありながらも変革を受け入れる組織へと姿を変えつつあるそうだ。

なにより、養命酒事業が縮小傾向にある中、この新規事業は、現場に活気と希望を生み出している。だからこそ投資を惜しまないのだ。

取材を通じて、くらすわのベースには、400年間で培った商品開発力、ものづくりの勘所があるのではと感じた。老舗メーカーのすごみ。そして今また、そのすごみを生かして、次なるステージへの挑戦が始まろうとしている。

「もちろん最終的には、数字的に成功することがマストです。時間をかけて結果を出していきたい。確固たるゴールに辿り着かなければなりません」と福盛さんは意気込む。彼がくらすわの店舗、くらすわの森をつくるなかで一番大事にしてきたのは、「目指す方向を一貫してぶらさないこと」。そして、「できるんだ」と言い続けることだという。この揺るぎない信念が、養命酒製造を未来へと導くに違いない。

養命酒
時代を越えて400年以上守られ続けてきた養命酒(写真提供:養命酒製造)
笹間 聖子 フリーライター・編集者

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ささま・せいこ / Seiko Sasama

フリーライター、時々編集者。おもなジャンルはホテルビジネス、幼児教育、企業ストーリー。編集プロダクション2社を経て2019年に独立。ホテル業界専門誌で16年間執筆を続けており、ホテルと経営者の取材経験多数。「週刊ホテルレストラン」「ダイヤモンド・チェーンストアオンライン」「FQ Kids」などで執筆。企業のnote発信サポーター、ブックライターとしても活動。大阪在住。

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