
「ちょっと懐かしいミスド」からの転換
安売り戦略と出店戦略の失敗により、一時は大きく店舗数を減らしたミスタードーナツ。
危機に瀕していた2016年、経営陣は覚悟を決めた。100円セールの完全廃止だ。単なる価格政策の変更ではない。長い歴史を持つ老舗ブランドが自らの価値を見つめ直し、再定義する決断だった。
目指したのは、「ちょっと懐かしいミスタードーナツ」から、商品やサービスを通じて、客にたくさんの“いいこと”を感じてもらえるブランドへの転換。言うは易しだが、実現は簡単ではない。商品、店舗、広告、社員の意識、そのすべてを変える必要があった。
スタートしたのは、「いいことあるぞ ミスタードーナツ」を新スローガンに掲げた3つの改革だ。順番に解説していこう。
最初に着手したのは、商品開発の改革だ。
来店のきっかけを増やすためにさまざまな施策が打たれるなかで、期間限定商品も生まれた。春のさくら、秋のさつまいも、栗。その一環として2017年4月にはじまったのが、他ブランドとコラボレーションする「ミスドミーツ(misdo meets)」シリーズである。
それまでミスタードーナツは、自社内だけで開発を行うことを基本方針としていた。だが、「外部と協力して商品開発をすることで、新たな技術などと出会い、今までにないドーナツの価値を提供できるのではないか」と、「共同開発」に舵を切ったのだ。

こだわったのは、「監修を受ける」のではなく、「共同で開発する」スタイルだ。相手の技術を受け継ぎ、人材育成につなげたい狙いもあった。実際、そうやって得た技術を生かした新製品も生まれているそうだ。
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