店主の中田浩吉さんは今年81歳になる現役のパン職人である。作業中にもかかわらず、快くインタビューに応じてくれた。
「もとは浅草で縫製工場をやっていたんだけど、こっちに土地を見つけたんで、思い切って移ったんですよ。まずは玩具店をやっていた。その後に、仲間がパン屋をやるというので、興味を持って、そこから修行してね。昭和52年(1977年)にパン屋を始めた。そこからずっと続けてるんですよ」
今では地域になくてはならない店のひとつとなっている。
「以前はこのあたりにも、八百屋とか魚屋があったんだけど、あちこちに大きなスーパーができてね。小さな小売店は、跡継ぎもいないから閉めちゃった。うちはなんとかやっていけてるけどね」
どこも時代の流れには逆らえないようだ。
写真が趣味という中田さんは、大師前に移ってからすぐの頃に、店の前の通りを撮影した写真を店内に展示している。
「街そのものは古いけど、このあたりの団地は、後から移り住んできた人が多い。そうした人たち同士で仲良くしてね。気を遣いあって生きている感じだね。古くから住んでいる人たちとの交流も盛んだし、落ち着いた、いい街ですよ」(中田さん)
「風景は少し変わってきたけど、最近は若い家族連れも増えてきたし、私らが越してきた頃よりは中学校や小学校も増えました」(中田さん)
これは別の住民が語っていたのだが、大師前は家賃も高くないので、若い世代には人気なのだそう。
老人介護施設の1階にある団子屋
バブル以前に移り住んできた人たちも年を取った。それでも最近は介護関連の施設も増えてきたので、安心して年を取ることができる。そう語る住民も多かった。
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