ところが、自動車保険や火災保険では掛け捨てが当たり前でも、生命保険となると「掛け捨ては損だ」と考えてしまう人が多いのです。どうして生命保険となると「掛け捨て嫌い」になってしまうのでしょうか。
その答えは日本の生命保険の歴史のなかにあります。明治以降、日本の生保会社は生命保険を、保険というよりも積立貯金に見せるようにして取り扱ってきました。
生命保険は「人の死」を扱っています。ところが、人々はそれを不吉だ、不謹慎だと考えがちです。そのために、生命保険は長い間、なかなか社会に受け入れられませんでした。「死」というネガティブな商材を扱うことから、生命保険を普及させることには大変な苦労があったのです。
これは日本だけではなく、世界中どこも同じでした。欧米では長い期間をかけ、正面から生命保険の意義や必要性を説き続けることで、少しずつ社会の認知を得てきました。ところが日本では、「死」を前面に出さずむしろ積立貯金として、言わば「死」をカモフラージュする方法で生命保険を世に広めてきた歴史があります。その代表的なものが養老保険という保険でした。
わかりやすく、しかも得する保険選びとは?
「養老」というネーミングが物語るように、この保険は老後資金を準備する積立貯金に、おまけとして死亡保障が付いているような商品です。このカモフラージュ作戦は見事に成功し、明治、大正から昭和40年代まで養老保険は、生保業界の主力商品として日本の保険普及に貢献しました。(連載第10回「保険に入るよりも、貯金したほうがよい」)
しかし、その結果、「生命保険は貯金のできる保険」というイメージを人々に深く印象付けてしまいます。いまだに、この思い込みは人々の脳裏に残っています。掛け捨ての生命保険は損だ、と何の根拠もなく信じている人が多いのはこのためです。
生保も損保も、保険は保障が目的です。だから「保険は掛け捨て」が正解です。そうすれば、生命保険、医療保険も損害保険と同じように分かりやすい保険になります。分かりやすいだけではありません。「保険」と「貯金」は別々にする方が、経済的にも得する場合がほとんどです(なぜなら、保険会社の手数料は銀行よりも高めです)。
「保険(保障)」と「貯金」はゴチャゴチャにせず、分けて考えることをお勧めします。保険はすべて掛け捨て、と割り切って考えるようにしてみてください。そうすれば、保険はすべてわかりやすくなり、経済的にも得することになるでしょう。
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