「保険と貯金はセット」と考えるのは間違いだ 自動車保険より生命保険が難しく感じる理由

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自動車保険は目的が保障ですから、支払う「保険料」と得られる「保障」の関係がよくわかります。「費用」対「効果」が1対1ですから、比較が一目瞭然です。つまり、自動車保険は、食品、衣料品、電化製品のような普通の商品と同じものさしで簡単に判断できます。

ところが、生命保険には「貯金」がくっ付いています。「貯金」は保険ではありません。預けたお金をどれだけ増やすか、というものですから普通の商品とは違うものさしで考えなければなりません。それが「リスク」対「リターン」です。

お金に対する欲望は限りがない

普通の商品は使用すること、使用価値が目的です。使用して得られる満足度は、使うほどだんだん落ちていきます。1杯目のビールはおいしいですが、2杯目、3杯目となるとおいしさは減っていくという理屈(限界効用逓減の法則)です。だから普通の商品の場合、その商品に対する欲望には限りがあります。

ところが「お金」はいくら持っていても、さらに増やしたくなります。普通の商品と違い「お金」に対する人間の欲望は無限です。この「お金」の持つ特殊な性格から、お金を増やす場合の判断基準には「リスク」対「リターン」を使います。運用、投資、ギャンブルなどに使われるものさしです。

生命保険には「保障」と「貯金」が混ざっています。だから保険選びの際に「費用vs効果」と「リスクvsリターン」の2つのものさしがゴチャゴチャになります。これでは、生命保険がわかりにくいものになってしまうのは当然です。

だからこそ、生命保険をすっきりさせる方法は簡単です。「貯金」をすべて取り外してしまえばよいのです。すると自動車保険と同じように、「保障」だけのシンプルな保険になります。判断するものさしを、ひとつにすることができます。

ところで、「貯金」を外した「保障」だけの生命保険は、「掛け捨て保険」になります。満期金、一時金、ボーナス金などが付いていない保険です。自動車保険や火災保険は基本的に掛け捨て保険です。保険は本来「保障」が目的の商品ですから、生命保険も掛け捨て保険が基本なのです。二兎を追わずに、保障だけを目的にすれば、生命保険も選び方は簡単になります(医療保険でも同じです)。

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