KKRとベイン、富士ソフト買収で飛び交う奇手奇策 会社の頭越しに、前代未聞の手法を駆使

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KKRが非公開化を果たした場合、ベインによるTOBを支持する創業家との関係構築が課題になる。複数の関係者によれば、創業家との交渉窓口は富士ソフトの坂下智保社長に一任されており、KKRが直接接触することは最後までかなわなかった。

創業家の持ち分はスクイーズアウトによって強制的に買い取られるものの、資本関係がなくなった後も会社への影響力は残りうる。なぜKKRではなくベインを支持していたのか、真意を測りかねたままの非公開化には一抹の不安がよぎる。

問われる企業買収指針との整合性

ベインが非公開化にこぎ着けた場合は、手続きの正当性が問われる。進行中のTOBに対抗提案を仕掛ける事例は珍しくないが、ベインの場合は正式な提案ではなく、本当にTOBに踏み切るかは不確定な「予告」にとどまる。

ベインの提案予告について、KKRは経済産業省が昨年8月に策定した「企業買収における行動指針」に抵触すると指摘する。同指針は合理的な根拠を欠いた予告を避けるよう求めており、ベインの手口はこれに当たるという言い分だ。

事情を知る関係者は「(ベインは)提案予告に先立って弁護士事務所とも擦り合わせ済みで、相場操縦には当たらないと考えているようだ」と指摘する。とはいえ、入札手続き終了後の乱入や、金融機関からの資金調達や資産査定が未了な段階での対抗提案をどこまで認めるべきか、企業買収をめぐる法整備の議論を呼びそうだ。

ベインの提案予告の公表も、KKRの2段階TOBも、いずれも会社の事前同意なくして行われた。富士ソフトが積極的な情報発信を控える中、会社の頭越しに投資ファンドが火花を散らす奇妙な構図が続く。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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