KKRとベイン、富士ソフト買収で飛び交う奇手奇策 会社の頭越しに、前代未聞の手法を駆使

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

2段階TOBの1回目に当たるのが、現在進行形のTOBだ。当初は買い付け株数の下限を53.22%と設定していたが、これを撤廃した。より高値を提示するベインのTOBに応募すべく、KKRのTOBに応じない株主が一定数出現する可能性を考慮したためだ。

富士ソフトの株主構成は、アクティビストや創業家の持ち分を除けば、ほとんどが金融機関やファンド名義での保有だ。政策保有株式として持つ事業会社もほとんどおらず、KKRとベインどちらのTOBに応募するかの票読みは容易ではない。

KKR自身、「(ベインの計画は)どの程度信憑性があるものかが明確でない」と批判する傍ら、「(ベインが本当にTOBを行うか否かを)見極めたいと考える株主がいることも理解する」姿勢も示している。

2段階TOBでベイン封じ込めへ

そこで、ひとまずアクティビストの3Dインベストメント・パートナーズおよびファラロン・キャピタル・マネジメントなど、応募契約を結んだ大株主の持ち分32.68%を買い付ける。1回目のTOBで53%の株式が集まらずとも、一定割合をかき集められればベインによるTOB成立の公算は小さくなる。

2回目は、ベインがTOBを断念した場合に発動される。KKRよりも高値を提示したベインに売り抜ける“アテ”が外れた株主に狙いを定め、10月下旬をメドに同じ1株8800円でTOBを行う。

ベインのTOBの成否が判明した後でも応募の機会を提供することで、非公開化に必要な株数の取得を目論むほか、一般株主が売り急がざるをえない「強圧性」の問題を回避する。

2段階TOB自体は前例がないわけではないが、いずれもファンドや創業家といった大株主と、それ以外の一般株主とで買い付け価格に差をつけることが目的だ。対照的に、KKRは1回目と2回目の買い付け価格が同じであり、もっぱらベインの介入への対抗策と位置づけられている点で異例だ。

次ページ3つのシナリオ
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事