KKRとベイン、富士ソフト買収で飛び交う奇手奇策 会社の頭越しに、前代未聞の手法を駆使

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

からめ手の末、富士ソフトはどこに漂着するのだろうか。今後のシナリオは3つありそうだ。

1つ目は、KKRが1回目のTOBで当初の下限株式数の53.22%を取得すること。ただ足元の株価は依然としてKKRの買い付け価格である8800円を上回っており、十分な応募が集まるかは不透明だ。

KKRが1回目で非公開化にこぎ着けられなければ、ボールはベインに渡り2つ目のシナリオが浮上する。11月にもTOBを仕掛けて首尾よく過半の株式を取得し、富士ソフトの非公開化を完了させることだ。

むろん、ベインがTOBに乗り出すかは未知数だ。ベインは実施の条件として、「金融機関からの資金調達にメドがつく」「資産査定に問題がない」「非公開化後の方針をめぐり富士ソフトの経営陣と意見が一致する」などを挙げている。ベインがTOBを見送ればボールは再びKKRへと移り、2回目のTOBを経て富士ソフトを非公開化する。これが3つ目のシナリオだ。

ベインによるTOBにはハードルも

実際、ベインによるTOBが成立するハードルは高い。会社側がベインへのTOBに賛同するためには、すでに表明したKKRのTOBへの賛同を撤回するか、両方のTOBへの応募を推奨する必要がある。

また、ベインは約15%の株式を握る富士ソフト創業家との間で交渉を進めており、一定割合こそ確保できる見通しだが、一足早く32.68%以上の株式を押さえるKKRは、ベインのTOBには応じない意向を示す。待ったをかけたことでTOBを仕掛ける時間こそ稼げたベインだが、非公開化を実現する道のりは平坦ではない。

富士ソフトがKKR・ベインいずれの手に渡ろうとも、その結末は釈然としない買収劇となりそうだ。

次ページどちらに転んでも残る課題
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事