沈む邸への訪問者
一条の邸に住む女二の宮は、なおのこと、会えないまま別れてしまった恨めしさも加わり、日がたつにつれて広い邸の中もだんだんひとけがなくなって、いかにも心細い様子である。それでもかつて督の君が親しく使っていた人々は、今もお見舞いにやってくる。督の君が好んでいた鷹や馬などの世話係の者も、みな寄る辺なく意気消沈して、ひっそりと出入りしているのを目にするにつけ、女二の宮の悲しみは尽きないのだった。督の君が使っていた道具類、いつも弾いていた琵琶や和琴(わごん)の絃も、見る影もなく取り外されて、音を立てないのも、気の滅入るようなわびしさである。庭前(にわさき)の木立が一面に芽吹いて、時を忘れずに咲く花を眺めてはもの悲しく思う。お付きの女房たちもみな鈍色の喪服に身をやつして、さみしく所在なく過ごしている昼頃、先払いのにぎやかな声がして、門の前に車を止める人がいる。「まあ、お亡くなりになった殿がいらしたのかと、ついぼんやりして思ってしまった」と言って泣く者もいる。大将がやってきたのだった。訪問の旨を告げる。いつものように、督の君の弟たち、弁の君や宰相がやってきたのだと女二の宮は思っていたのだが、こちらが気後れするほどの気品に満ちた姿で大将があらわれる。
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