 
橋姫 宇治に暮らす八の宮と二人の姉妹
世間から忘れられ、二人のうつくしい姉妹と
 宇治で暮らす親王がいたのでした。
世間からは忘れられている古い親王
その頃、世間からは忘れられている古い親王(みこ)がいた。親王の母方も高貴な家の生まれなので、ゆくゆく格別な地位に就くだろうと噂されていたのだが、時勢が変わり、世間から冷たい扱いを受けるようなことになってしまった。その後はかつての声望もなくなり、後見(うしろみ)の人々もあてが外れたことを恨めしく思い、それぞれの事情によって出家したり、政界を退いたりしたので、この宮は公私ともに頼る人もなく、世間からすっかり見放されたような有様となってしまった。
この宮の北の方も、昔の大臣の娘であったが、そのようなことになってしまってしみじみと悲しく心細く、親たちが自分に期待していたことを思い出すと、ひどくつらい気持ちになる。けれども夫婦仲がまたとないほど睦まじいので、つらいこの世のせめてものなぐさめとして、お互いにこの上もなく信頼し合っていた。


 
         
        
       
        
       
        
       
           
           
           
          
         
         
         
         
        












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