私たちは利益については知り尽くしているが、組織内の各人の信頼性や果敢さが正しく認識され、伸ばされ、結集されていたとしたら、どれほどの利益が得られたかについては知ろうとしない。
また、諸経費を計上する一方で、信頼性の低下によって生じる、余分な中間管理職層や過剰な規則による制限、本来は不要だったノルマにもとづく評価や職場支援、常習的欠勤や顧客離れ、無駄を見過ごす。
何より、次なる目標やアイデアを追うことに懸命なあまり、人間の本質や相互作用の不変性を見過ごしてしまう。
組織がうまく機能するかどうかは、集団の規模に大きく左右される。このことを理解するために欠かせないのが、ダンバー数として知られる数字である。
「ダンバー数」とは何か
ひとことで言えば、ダンバー数とは1人の人がある時点で人間らしい関係を維持できる人数の上限を意味する。
これを知るには、個々の人に自分が人間らしい関係にある親友や親族をリストアップしてもらう。あるいは、その人たちが電話、携帯メール、パソコンなどで連絡する相手をマッピングしてもらう。フェイスブックその他のソーシャルメディアで接触する友だちの数を調べてもいい。
まったく別の方法もある。狩猟採集社会から歴史的集落、教会の会衆などの大きさ、現代の科学協力ネットワークのように、過去や現代における自然集団の典型的な規模をチャートにする方法だ。
だが計算法をどう変えようと、答えはほぼ100人から200人の範囲内に収まる(図1参照)。30ほどのデータセットの平均は155人になる(図1参照)。
この数値はたいてい便宜上150人に丸められる。これが現在知られるところのダンバー数である。
私的な社会的ネットワークにおいては、ダンバー数は人が相手に対して義務感を覚える最大の人数と定義される。
この人数は、ある程度規則正しい頻度で会う人(たとえば、少なくとも年に1回)で、知り合ってから長い人の数ということになる。もし助力を乞われたら、見返りがないとわかっていても願いを聞き入れる相手の数だ。