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「軍隊型」の会社からは人が逃げ出す、新たな組織のカギは「冒険」だ/『冒険する組織のつくりかた』著者・安斎勇樹氏に聞く

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『冒険する組織のつくりかた』著者の安斎勇樹氏
[著者プロフィル]安斎勇樹(あんざい・ゆうき)/MIMIGURI 代表 Co-CEO。1985年生まれ。東京大学大学院博士課程修了。博士(学際情報学)。組織づくりを得意領域とする経営コンサルティングファーム「MIMIGURI(ミミグリ)」を創業。資生堂、シチズンなど350社以上を支援。著書『問いかけの作法』、共著『問いのデザイン』など。(撮影:三井 実)
ビジネスは「戦争」、会社は「軍隊」。当たり前のように用いられてきた例えに、著者は違和感を持っている。私たちは今後どのような組織を目指せばよいのか。提案するのは、「冒険」を軸に広がる新たな世界観だ。

「会社中心」から「人生中心」への過渡期

冒険する組織のつくりかた「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法
『冒険する組織のつくりかた「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法』(安斎勇樹 著/テオリア/2640円/448ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──「組織の社会的ミッション」と「個人の自己実現」を両立させようとするのが「冒険する組織」だと定義されています。このアイデアはどこから出てきたのですか。

軍事的な世界観で仕事を語ることへの違和感からだ。

ビジネスの場では「戦略」「陣頭指揮」「参謀」など軍事用語が多用される。それは多くの企業で多くの社員が軍事的世界観の下で働いてきたことの表れだろう。個人が組織のためのパーツとして扱われるこの世界観を支えたのが、「会社中心のキャリア観」だった。

今起こっているのは、「仕事は人生を充実させる要素の1つ」と捉える「人生中心のキャリア観」へのシフト。働く人の意識が大きく変わる過渡期にある。

話が少し脱線するが、僕は顧客へのコンサルティングでも自社の会議でも、漫画を例に話をすることが多い。同じ物語を念頭に置くことで、お互いの認識を揃えられるからだ。

あるとき会社の仲間に、「なんで安斎さんは漫画の例え話をよくするのに、『キングダム』を話に出さないんですか?」と聞かれた。『キングダム』(原泰久・作)は秦の始皇帝による中華統一の時代を描く作品で、経営者やスタートアップ関係者に非常に人気がある。

僕自身も連載を毎週追いかけているくらい好きで、確かに仕事の例え話にはぴったりだ。にもかかわらず自分が『キングダム』に言及してこなかったのはなぜか。理由を考えてみて、改めて気づいた。僕は自分の会社のことを軍事的な世界観や用語で説明したくなかったのだ。

新たなキャリア観に対応するオルタナティブの世界観を考えたとき、海賊たちの旅と戦いを描く『ONE PIECE』(尾田栄一郎・作)の主人公ら「麦わらの一味」が頭に浮かんだ。

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