検査の後、人工授精(夫の精子を人工的に妻の子宮内に注入すること)を半年間で6回試みたが妊娠できなかった。現在は、体外受精(取り出した卵子を精子と受精させた後に子宮内に戻すこと)に移っている。人工授精は1回につき3万円で済んだが、体外受精になると1回60万円弱にはね上がる。
治療費は夫の夜バイトで……
「私は前回の採卵では元気な卵子の数が足りなかったので、来月にまた採卵が必要です。それだけお金もかかるし、毎日のように人様にお尻を見せてホルモン剤を注射されるんですよ。不妊治療が原因で合併症を起こし、のたうち回ったこともあります。空手で骨折したときの比じゃないほどの痛みでした。父からは『まだ見ぬ子どもよりお前の体のほうが大事だぞ』と諭されています」
博之さんは夜間に塾講師のアルバイトをして治療費を稼いでいる。しかし、真由さんはときどき不安になる。自分が子どもを欲しいから夫は協力してくれているだけで、本当は負担に感じているのではないか、と。
「『僕が出会った女性が子どもが欲しいと言ってくれてラッキーだと思った。子どもがいてくれたらきっと楽しいよ。でも、治療で苦しい思いをするのは君だから、いつでもやめていい』と言ってくれました。じゃあ、まだがんばってみようかな、と思い直しています」
真由さんが設定している治療の期限は、不妊治療の助成金が打ち切られる43歳まで。あと4年あるが、それまでに子どもが2人ほしいと思ったら、そろそろ妊娠しないと間に合わない。真由さんは持ち前のガッツを発揮して、心身の苦痛に耐えながら治療を続けている。
何よりの支えとなっているのは、やはり博之さんの存在だろう。お互いを真っ先に思いやり、喜びも苦しみも分かち合える人とともに暮らすことの安らかさを、真由さんは今こそ感じているはずだ。苦難の中にこそ幸福の実感があるのかもしれない。
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