新宿御苑の木々が風に吹かれてざわめくのを感じながら、高級中華料理店「礼華」の入り口をくぐった。今日、話を聞かせてくれるのは小児科医の西岡真由さん(仮名、39歳)。10年間にわたる婚活の末に結婚し、現在は激痛を伴う不妊治療の真只中にいる女性だ。せめておいしい食事をご馳走しなければならない。
真由さんは約束の時間どおりに現れた。シックな柄のワンピースに身を包み、表情は晴れやか。精力的な印象さえ受ける。結婚願望を持ち始めたのはいつごろですかと問いかけると、躊躇せずに苦い思い出を語ってくれた。
「22歳の頃にストーカー被害に遭って、恋愛恐怖症と男性不信になってしまいました。このままではいけないと思い、初めて男性と付き合ったのが27歳のとき。相手は後輩の医者です。
今から振り返ると、男性への恐怖心がまだ強くて、相手の選び方が変になっていました。社交性があって華やかな男性は怖く見えてしまい、冴えなくて全然モテない人をあえて選んだのです。挨拶もちゃんとできないぐらい社会性がなく、しかも強度のマザコン。お互いの親から大反対を受けました。だからこそ意地になって結婚しようと思ったのだと思います。
でも、彼からは『うちはお金がないから、結婚して子どもを産んでも働いてほしい。親と叔父の介護もしてほしい』と言われ、彼の母親からは日本語になっていないような罵倒メールを送りつけられたりして、さすがに目が覚めました。予約していた式場をキャンセルして本当によかったと思います」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら