まさかの「人材不足倒産」がやってくる! 深刻度を増す日本企業の採用難

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帝国データバンクの発表によると、2015年上半期の倒産件数は6年連続の前年同期比減少。負債総額も3年連続で減少しました。ただし、倒産件数で求人難による倒産件数・負債総額は増加。これまでの人材倒産は代表者死亡や入院などによる「後継者難型」が中心だったので、アベノミクスが生み出した新たな課題として指摘されています。

実際には、人材倒産の件数が倒産件数全体に占めるシェアではわずかかもしれません。ただ、会社の人材が大きく流出しているのに新規採用がうまくできなかったり、内部の人材が多忙で疲弊しきっているような、倒産の予備軍のような会社を多く見かけます。

では、どうしたら人材不足から逃れられるでしょうか。その回答としてよく登場するのが「高齢者」「育児中の女性」の積極的な活用です。高齢者の雇用は技能伝承や生産性向上といった寄与が期待できます。女性の雇用は男性にない新たな視点からビジネスを考えることで新しいチャンスを生む可能性を秘めています。

ただ、高齢者も女性も確保できないときにはどうするか?ソフトバンクのPepperのようなロボットの導入で人手不足を解消するというようなことが、本格的に検討課題にのぼってくるかもしれません。ちなみにソフトバンクグループの孫正義代表は

「ロボット1台で3人分の仕事ができ、月給は1.7万円で済む」

と言っています。

人手不足による倒産をロボットで解決?!

低賃金で休日も不要なロボットの導入によって「モノ作り大国ニッポン」は復活できる。自動車が生まれてすでに200年。パソコンが生まれて30数年。次に生活環境を大きく変えるのがロボット。ロボットは1日24時間働けるため、1台のロボットで3人分の仕事をする。つまり、1000万台が稼働すれば3000万人分の労働人口に匹敵し、これで人手不足が解消できるというのです。

単純労働はロボットがやり、人間は高付加価値の仕事に集中でき、日本経済も復活すると、孫社長は希望に満ちたコメントを発しています。突拍子もない夢物語を語っているのではなく、今、日本企業が直面している人材倒産という事態を防ぐためにも、とても有効な施策かもしれません。

ちなみに日本政府は2015年度を「ロボット革命元年」と位置づけ、産業界へのロボットの普及を促進するようです。実際、2015~2019年度の5カ年計画「ロボット新戦略」を策定し、1次産業から3次産業まで広範にロボットの導入を目指していくとしています。

これまでも民間ベースでは、人手不足の対策としてさまざまなロボットを活用しています。大手企業の製造現場のみならず、老舗旅館で配膳するロボット、牛丼などのどんぶりに飯を盛るロボット、すしのシャリを高速で握るロボット、肉や野菜などの食材を串に刺すロボット、倉庫で荷物を搬送するロボットなど、一部の中小企業ではありますが、人手不足をロボットで解決しようという試みが始まっています。

人手不足が大きな課題になっている物流業界では荷物の仕分け、積み出しにロボットを活用する会社が増えています。さらに活用できる領域は拡大をしていくことでしょう。すると

「人手が足りなくなる前にロボットの手配を早急に進めるべし」

と人事部長が部下に指示する時代も訪れるかもしれません。まだまだ遠い話かもしれませんが、人手不足による倒産も、これで解消できるといいですね。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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