「自信がない人」は簡単なことに気づいていない 自己肯定感を高められる「超簡単テクニック」を伝授
「書道! なつかしいな、中学生の頃にやったな~。上手いんですか?」
大学生は今度は恥ずかしそうに俯き、こう言った。
「全国2位です……」
おいおいおいおいおい。待て待て待て待て待て待て。何? え?
突然の全国覇者クラスの登場である。もはや運動神経はどうでもいい。そんなものよりも圧倒的に誇れる実績すぎるだろ。
忘れた方がいい全国2位?
むしろ俯いて言うことじゃないのよ。表彰台の上で銀メダル齧りながら言うべき内容なのよ。
突然のカミングアウトのインパクトが極端に大きい。気持ちの整理がつかない。なんかコーラでごめんなさい。シャンパンとかほしかったですよね。
そんな大学生に私は言った。
「いや、すごいじゃん。驚異的な実績じゃないですか。なんでそんなの隠してたんですか」
俯き加減を少しだけ水平に戻しつつ、また予想外のコメントが返ってきた。
「隠していたのではなくて……。忘れていたっていうか、なんの自慢にもならないなと思って」
おいおいおいおいおい。待て待て待て待て待て待て。何? え? え?(二回目)
自慢にしかならないだろ。その実績を貶せるのは全国一位の奴だけでしょ。
全国2位よ? 日本人は一億二千万人いるのよ? 自分の下に119,999,998人以上いるのよ? 覇者じゃん。皇帝じゃん。閣下と呼ばせてください。
「えー、一生誇れる素晴らしい功績だと思いますけどねー! もしかしたら書道の先生のバイトとかできるんじゃないですか?」
若き天才、ないしは全国2位に教えてもらえるのだ、絶対に需要はあるだろう。
しかし大学生は改まった様子で虚空を見つめて、再度私にこう返した。
「いや、でもそのあとずっと入賞できなくて。そうしたら私の過去の入賞も全部マグレだったんじゃないかって思えてきて、実感もなくなって全てが嫌になってしまったんです。だからもうこのこと忘れようかなって思っています……。なんかすみません、こんな話しちゃって」
手元のコーラよりも気の抜けた素振りで、彼女は暗い雰囲気に包まれ、私は何を言えばいいかとあたふたとしてしまった。そんな苦い記憶である。
その後も、私は人生で似たような人間に三人遭遇した。
一人は、世界三位のパントマイムパフォーマー。もう一人は数学オリンピック国際大会出場者。最後の一人は、けん玉の世界チャンピオン。
しかし、そんな栄光を手にしているのに、全員が口を揃えて自信なさげにこう言うのだ。